巨人阿部慎之助新監督(44)が“最高の凱旋(がいせん)”を喜んだ。ドラフト会議から一夜明けた27日、1位指名した母校の中大・西舘勇陽投手(21)の指名あいさつを都内で行った。日本ハムと2球団競合の末、交渉権を獲得。23年前、自身が逆指名でプロの門をたたいた光景が走馬灯のようによみがえった。当時と同じ中大・清水達也監督(59)も会見に同席。巨人に「中大の系譜」が受け継がれた。

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阿部監督が23年ぶりの“キャンパスライフ”に頬を緩ませた。1位指名した中大・西舘の指名あいさつで八王子市内の中大・多摩キャンパスを訪れた。監督として運命的な母校訪問。紅葉が秋の訪れを感じさせる。「きれいですね。先ほど100メートルくらい(キャンパス内を歩いて)一瞬だけ学生時代に戻らさせてもらって、やっぱり僕には似合ってないなと思いました」と自虐的に笑った。

緊張で固まる後輩を優しく迎え入れた。「人見知りなので」と自認する西舘を気遣い、会見では開口一番に「今日はとてもおめでたい日なので、ちょっとだけスマイルでいきましょう」と会場を和ませた。

何よりもこの空気が懐かしかった。「自分自身もまさかこういう形で久々に母校に帰ってこれるとは夢にも思っていなかった。実際に本人を前にしてすごく初々しいなと思いながらも、二十数年前に僕もここから旅立たせてもらったことを思い出して、今日はうれしいですし和みますね」と感慨に浸った。

同席した同大・清水監督は阿部監督が大学入学時に監督1年目だった。その年の春季リーグで東都大学2部リーグで優勝。後にドラフト1位で送り出した教え子が巨人の監督となり、また教え子をドラフト1位で指名した。清水監督は「慎之助がここにきて、教えた子が1位で入っていくなんて夢にも思っていなかった。西舘には慎之助を男にしてほしいなと思います」と偉大な教え子の背中を押した。

西舘は「中大の系譜」を受け継ぎ、プロ野球選手としてスタートを切る。花巻東出身の右腕に球団は背番号17を用意する。同校OBの菊池雄星、大谷翔平が背負う番号に「特別な番号だと分かっているので、そういうのもあって、すごく自分としてはうれしく思う」と決意をにじませた。阿部-西舘の“中大バッテリー”で頂点を奪回する。【為田聡史】