古巣相手のデビュー戦で“恩返し”の初安打初打点をマークした。日本ハム水谷瞬外野手(23)がソフトバンク戦に「6番左翼」でプロ初出場初スタメン。1点を追う3回1死満塁で、大関の初球チェンジアップを引っ張り同点の左前打を放った。5年間1軍出場がなかった“ロマン砲”が、新天地で大きな一歩を踏み出した。

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愛称「ジェッシー」水谷が、うれしー初安打を放った。初回無死一塁でのプロ初打席は空振り三振も、3回にチャンスが来た。1点を追う1死満塁で打席に立つと、タイミングを外しにきたソフトバンク大関の初球129キロチェンジアップを、果敢にスイング。バットの先で拾った打球は、三塁・栗原を越える同点打となった。

一塁塁上で両手を上げてガッツポーズ。「やっぱり九州で今日打ちたいという気持ちがあったので、打ててよかったです」。記念球はすぐに三塁側ベンチへ投げ返され、新庄監督がボールを高く掲げ、北九州のファンにお披露目した。節目を大事にする指揮官ならではのパフォーマンスに、敵地ながら観衆も歓喜。水谷は試合後「母が来ていたので渡しました」と、笑顔で振り返った。

普段通りに試合に入るつもりだったが、体が思うように言うことを聞いてくれなかった。試合前は「ド緊張です。昼からご飯が入らなかったです」。1点リードの1回1死一、三塁の左翼守備では、山川の飛球をグラブに当てて後逸。同点に追い付かれてしまった。照明が目に入り、目測を誤った。「そんなところは言い訳にはできない。まだまだ技術不足。ここからやっていかないといけない」と反省した。

試合後はソフトバンクの元チームメートだけでなく、当時のバスのドライバーからも祝福される人気者。「ネットの記事とかで目にすることもあると思うけど、リアルタイムで見て頂けたのが僕の中でうれしい」。記念の一戦は1安打3三振。帰りのバスの前でソフトバンク牧原に「(ヒットの)後が良くないね」と突っ込まれ苦笑い。水谷は「やっぱ力みすぎ」。余計なよろいは脱ぎ捨てた。次から存分に、怪力を披露する。【永野高輔】

◆水谷瞬(みずたに・しゅん)2001年(平13)3月9日生まれ、愛知県出身。石見智翠館では甲子園出場なし。18年ドラフト5位でソフトバンクに入団。23年オフに現役ドラフトで日本ハム移籍。今季は2軍で13試合に出場、打率2割8分6厘、4本塁打、12打点。193センチ、99キロ。右投げ右打ち。