巨人が誇る「スガコバ」バッテリーが、この日ばかりは「コバスガ」になった。小林誠司捕手(34)が、決勝“ポテン”適時打を放ち、菅野智之投手(34)に今季2勝目をもたらした。受けては6回3安打無失点の好リード、打っては942日ぶりの決勝打。女房役として攻守で支えた。後続も無失点リレーで断ち切り3連勝。プロ野球史上初めて開幕11試合目で5完封を記録し、貯金1とした。

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ポテン適時打にするべく、一塁ベース目がけて突っ走った。小林は狙っていた。6回2死一塁で回ってきた打席。2球目に一走・佐々木が二盗を決め、チャンスが広がった直後の3球目だった。ヤクルトの左腕・高橋の内角に食い込む直球を強振。勢いを殺した打球は、ふわふわと左前へ舞い上がり、絶妙な場所に落ちた。小林は「僕の精いっぱいなので、本当に」とベース上でガッツポーズ。ベンチ横で準備をする菅野は、グラブをたたいて喜んだ。

春の珍事と言うには、偶然が重なり過ぎていた。小林の決勝打は、さかのぼること2年半前。21年9月12日広島戦以来、942日ぶりだった。一方で、17度ある決勝打のうち、菅野登板時は最多6度もある。もはや偶然と言うよりは必然だ。菅野は「こんな言い方をしちゃいけないけど、多分、誰も点が入ると思ってなかったんで。でも、本当に気持ちのこもった一打だった。あそこで僕も、もう1回、気持ちを入れなおして、次の回、全力で行けました」。意外な? 一打が、菅野を勇気づけた。

先制直後、ヤクルトのクリーンアップを迎えた6回裏の守りでは、小林のサインに、最後まで菅野が首を横に振ることはなかった。オスナを2球で三ゴロに打ち取り、4番村上はカウント2-2からスライダーでバットを誘って、ハーフスイングで空振り三振。最後はサンタナを124キロのカーブで見逃し三振に仕留めた。6回を散発3安打無失点。昨年7月17日、村上らに2本塁打浴び、1回もたず1/3回6安打6失点で防御率162・00を記録した姿は、そこにはなかった。

結果で示してきた相思相愛の絶妙コンビ。「僕はもうドキドキなんですけど、智之が本当に引っ張ってくれて」と小林がねぎらえば、菅野は「誠司に任せておけば、なんか大丈夫な気がするんで」。この試合だけは「スガコバ」が「コバスガ」に。主役は代わっても、チームが勝てばそれでいい。コンビでもたらした3連勝で、貯金生活に入った。【栗田成芳】