<楽天6-2オリックス>◇16日◇楽天モバイルパーク

単純な速さだけではない「走力」が、楽天に決勝点をもたらした。初回に2点を追い付き、なお1死三塁。阿部の打球は高いバウンドで三塁方向へ跳ねた。三塁走者の浅村は「しかも、ランナーとかぶる難しいところだったんで。暴投あるかなと思って」スタートを切った。狙いは当たった。定位置よりやや前寄りに守っていたオリックス西野は、本塁への返球を引っかけた。捕手森は前のめりになって捕るしかなかった。

直前、浅村栄斗内野手は立ち止まっていた。「タイミング的にはアウトだったので。ボールがそれることだけ考えていました」。悪送球にならなければ、三本間で挟まれて打者走者を最低でも二塁まで進めるつもりだった。結果、悪送球を呼んだ。それを見て、瞬時に本塁へ再加速した。森も負けていない。上体を必死に伸ばし、タッチしてくる。浅村は上体をねじるようにしてかわし、生還した。判定はアウトも「タッチされている感触もなかったので、リクエストを要求しました」。セーフにくつがえった。

お立ち台では「阿部さんがややこしい打球を打ってきたんで」とおどけたが、中身が詰まった大きな1点だった。守備位置、打球の質、方向といった状況判断。何より、簡単にアウトにならない執念。ファンは「浅村の1ミリ」と盛り上がった。「好きに言ってください」と照れ気味に笑った。好走塁の前には同点の2点適時二塁打を放ち、6回には犠飛で計3打点。頼れる柱が本領を発揮し、最下位を脱出した。【古川真弥】