高校出新人の10勝投手は1999年の西武時代の松坂、2007年の楽天の田中とパ・リーグに続いていた。その一因にセに指名打者制がなく、先発は常に代打を送られる可能性があることが挙げられる。しかも42試合で12勝、うち救援勝利が3だった江夏に対し、藤浪はここまで19度の登板。白星が付きにくい条件下の快挙が藤浪の非凡さを際立たせる。

 先発で5回を持たなかったのは3度だけだ。1回の安定感やピンチでのギアの切り替え、試合中の修正などは新人離れしている。両リーグで投手経験がある球団関係者は「ビハインドも最小限に抑えるから序盤で代えられない」と指摘する。

 セは分析が緻密で弱みを突く傾向が強いともされる。元投手の伊藤トレーニングコーチは「スコアラーの包囲網が強固でちょっとした動作や手首の角度まで研究される。その中で勝っていくのはすごい」と感心するように、藤浪は弱点だったクイック投法を早々と改善した。一時の不調を脱したのも大胆なフォーム改造だった。