<オリックス2-4中日>◇15日◇京セラドーム大阪

 中日中田賢一投手(26)が粘りの投球で、4月29日横浜戦以来、7試合ぶりに5勝目を飾り、チームの連敗を3で止めた。中田は9安打されながら要所を締めて8回2失点。最後は前日、初のサヨナラ弾を打たれた守護神・岩瀬が3人でピシャリ。岩瀬は5年連続の20Sを達成した。打っては6回に中村紀、ウッズ、和田とクリーンアップの3連打で4点を奪取。投打がかみ合って連敗を脱出。再び上昇気流に乗るゾ!

 中田がやっとトンネルの出口を見つけた。「長かったですね。この1カ月は…。今までのことをすべて忘れて、1人、1人と思って投げました」。8回2失点で5勝目。4月29日横浜戦以来、7試合、47日ぶりの勝利のスマイルだった。

 3回を除くすべてのイニングで走者を背負ったが、変化球を低めに集めて4併殺を奪った。終盤7回にはギアチェンジ。先頭のローズに四球を与えたが、北川、日高を149キロの直球で、浜中をスライダーで3者連続三振に打ち取った。8回に本塁打などで2失点したが、四球はわずか1個。制球力と球威を高いレベルで発揮できた。

 今回の登板前、中田は悔しそうに言った。「僕がやってきたことは無駄だと思わない。周囲にいろいろ言われることは気にしていません」。キャンプで制球力を磨いた今季、球威が落ちた。5月から勝てなくなった。暴れなくなった“暴れ馬”に対し、周囲は制球重視の姿勢が原因だとした。「自分の1番の武器を捨てたんだ。でも今、言っても聞く耳持たんだろ」。落合監督も首位追撃のキーマンと考えるからこそ嘆いた。

 ただ、指揮官の言葉通り中田は頑固だった。原点回帰を求める記事や評論が掲載されている新聞は一切、読まなかった。ランニング、投球練習を増やすなどして黙々と球威を取り戻した。「迷惑ばかりかけたのでこれから1つずつ、勝っていきたい」。連敗を3で止め、阪神に7・5ゲーム差とする貴重な勝利。14勝を挙げた昨年の球威が完全に戻ったとはいえないが、光が見えたのも事実だ。

 福岡に遠征した6月10日、北九州の実家に帰った。昨年亡くなった父・治英さん(享年56)の遺影と久しぶりに“対面”した。父は7年間も病魔と闘った不屈の人。中田の頑固さは父親譲りだ。くしくも長いトンネルから脱出したこの日は「父の日」だった。【鈴木忠平】