<西武2-5ソフトバンク>◇8日◇西武ドーム

 現役時代から1度も退場したことがないソフトバンク王貞治監督(68)が、退場覚悟の猛抗議で低迷するチームにカツを入れた。4-2と2点リードの7回2死一塁から中西が左越え二塁打を放ったが、一塁走者明石が西武細川のブロックで本塁憤死。左足で進路をふさぐようなプレーに王監督は「走塁妨害」を訴え、約5分間にわたって猛抗議を行った。首位西武と6ゲーム差で迎えた2連戦。逆転優勝をあきらめない王監督の姿勢に鼓舞され、チームは勝ち、勝率5割復帰3位タイに浮上した。

 遅延行為での退場となる5分の抗議時間を超えるのは、すぐそこだった。それでも審判団の前には、仁王立ちする王監督がいた。左手で球審を指さし、ときには両手を広げ、抗議を繰り返した。「選手は何とか点を取られるのを防ごうとするが、審判が走塁妨害を取らないんだから」。7回の本塁クロスプレーの話題になると、王監督の声のトーンは跳ね上がった。

 1点を奪い、4-2とリードして、なお2死一塁から中西が左越え二塁打を放った。一塁から代走明石が一気に本塁を狙った。捕手細川の左足が進路をふさぐような形で出ているのを、明石は回り込んで手で本塁を触ろうとしたが、触れられず。あわてて本塁に触ろうとして、細川にタッチされた。判定は「アウト」。王監督の形相が変わった。

 王監督

 あの映像を(プロ野球がある)米国、韓国、台湾で流してほしい。日本の審判が取らないから、選手もやるんだ。きれい、汚いという言い方はあれだが、見たくないプレーだ。

 借金1の4位で迎えた首位西武との2連戦。「うちとしては追う方なんだから、最初を取るのが絶対条件」と王監督は言った。現役時代を通じて1度も退場処分がない。その球史を塗り替えかねない行動で、勝利への執念を示した。

 発奮したのか、ナインは9回にダメを押し、守っては終盤3回を1人の走者も許さず逃げ切った。「とにかくこういう試合を続けていかないと。打つ方も投げる方もそれなりの仕事をしないとね」と王監督。総力戦で勝率5割、3位タイに浮上した。【中村泰三】