<巨人2-4阪神>◇13日◇東京ドーム

 金メダル球の一発が飛び出した。巨人との投手戦は延長10回、阪神金本知憲外野手(40)が決勝19号3ランをライナーで右翼席へたたき込んだ。これで阪神のマジック36が再点灯。5連敗と足踏みしていたけれど“夏休み”はこれでおしまいにして、再加速ってなもんだ!

 北京で戦う弟分に心配させる訳にはいかない!

 久々の勝利を決める一発に笑顔が弾けた。金本はゆっくりと三塁ベースを回ると、和田コーチの差し出した手を威勢よくたたいた。ベンチで出迎えるナインとも続けざまにハイタッチ。快勝後には力強いガッツポーズも見せてスタンドの声援にも応えた。

 「今日はもう、みんなでつなぐ気持ちで、全員がヒーローになると思っていました。でも、まさか自分が決めることになるとは…」

 延長10回。マウンドに上がった守護神クルーンは制球が定まらず、関本、鳥谷に連続四球を与えた。続く金本に対し、原監督は苦渋の決断で左腕藤田を送る。その2球目。初球に続いて内角に来た直球を迷わず振り抜いた。打球は右翼スタンド中段に飛び込む今季19号3ラン。主砲のここぞの一発で、緊迫した投手戦にケリをつけた。

 「二、三塁か、最悪でも一、三塁になるように、右方向に強い打球を打つことを考えていた。外野が前に来ていたので、気持ちが少し楽になった。うまいこと(体が)開かずに打てました。久々に気持ちがよかったよ」

 五輪組の3人が抜けた後半戦。チームは1勝を挙げた後、今季初の5連敗を喫していた。チームに暗いムードが漂う中、何としても連敗を食い止めておきたかった。前日、北京で初戦に備える新井にメールを送ると、返ってきたメッセージは「大丈夫ですか?」。チームを離れ、日本代表として戦う仲間を心配させるわけにはいかない。そんな強い思いが、後半戦7試合で27打数13安打、打率4割8分1厘、3本塁打、11打点という驚異的な数字にも表れている。

 ちょうど3カ月前。広島と対戦した富山でプロ通算400号本塁打を放った。そして翌日、金本の手元にはメモリアルボールが届けられた。送ってくれたのは、スタンドでボールを拾ったカープファンの大学生。かつて声援を送ってくれたファンの粋な計らいに、金本は新しいサインボールを送り返し、感謝の気持ちを伝えた。相手の思いやりには、どんな時もしっかりと応えるのがアニキの心意気。そしてこの日の一発は、北京の地で戦うチームメートへの“心配せんでも大丈夫や”という力強いメッセージでもあった。

 この日の勝利で、5日に消滅したマジックは「36」で再点灯。2位巨人とのゲーム差も再び8に開いた。

 「(優勝した)03年にしても大連敗したし、マジック1になってからも連敗したからなあ。でも1つ勝てばね。これをきっかけにどんどん勝っていきたい」

 トンネルを抜ければ待っているのは明るい光のはず。6試合ぶりの白星に主砲、そしてナインの顔に笑顔が戻った。【福岡吉央】