<CS第2ステージ:西武0-5日本ハム>◇18日◇第2戦◇西武ドーム

 落とせない一戦で、絶対エースの働きだ。日本ハム・ダルビッシュ有投手(22)が西武打線を散発3安打に抑える完封ショー。死球覚悟のツーシームを武器に、前日17日に10得点と爆発した西武強力打線をねじ伏せた。負ければ日本シリーズ進出に王手をかけられた一戦で大きな1勝をもたらし、対戦成績を1勝2敗とした。

 敵地でも関係なかった。ダルビッシュがヒーローインタビューで、ふてぶてしく言い放った。

 ダルビッシュ

 負けるわけないと思ってマウンドに立ちました。昨日、あんだけ打たれて嫌な負け方だったので、絶対的な投球で相手にダメージを与えるようなピッチングをと思っていた。負けたら王手?

 追い込まれれば追い込まれるほど楽しくないですか?

 もう1回投げても同じ結果になる

 言葉通りに「絶対エース」が仁王立ちした。“凶器”のようなツーシームがさえた。シュート気味に右打者に食い込んだ。「死球でもいいと思って腕を思い切り振った。シーズン中は遠慮しているけど今日は関係ない」と、存分に見せつけた。

 3回には前日2発の中島へ、カウント2-0から投じた149キロのツーシームが体を巻くように変化した。鶴岡も「左投手のスライダーのように曲がった」と目を丸くした決め球で空振り三振。第1打席でもバットを粉砕して投ゴロ。4番後藤も空振りで転倒するシーンがあるなど、ツーシームを効果的に使った。シーズン打率4割と打たれていた中村も含め、右の中軸3人を12打数無安打とねじ伏せた。試合前に鶴岡と「普通に抑えるだけじゃダメ。1点もやらないつもりで」と確認し、3安打に封じ込んだ。

 196センチと長身だが、上背の割に手の大きさ、指の長さは人並みだ。今季中盤まで、人さし指と中指にボールを挟むフォークボールの握りで投球セットに入る動作を徹底した。グラブ内で握りを替えて投げたが、指の可動域を広げる地味な作業を繰り返していた。ツーシームを含めた変化球に磨きをかける努力だった。

 2戦目にエースを投入した梨田監督は「西武打線があんなに嫌がっているのを初めて見た。オレも(捕手で)受けたかったな」とほれぼれしていた。打ち取る形の多いツーシーム多投だけに奪三振6個は少なめだったが、負ければがけっぷちの戦いを計算通りものにした。

 06年からプレーオフ、CSは4完投目で無傷の5連勝。「こういう試合を任されるのは幸せ。これで独り相撲したらアホみたいやから」。大舞台こそが喜びになる。最後まで、ふてぶてしいまでのダルビッシュがいた。【村上秀明】