<中日1-0横浜>◇15日◇ナゴヤドーム

 中日井端弘和内野手(34)が左越えに劇的なサヨナラ二塁打を放ち、連敗を止めた。0-0の延長10回2死二塁で、負傷した右上腕の痛みをこらえ、横浜4番手真田のスライダーをたたいた。チームは負ければ最下位転落がちらつくがけっぷちで息を吹き返し、4位に浮上した。中日吉見一起投手(24)は延長10回を13奪三振、江夏(阪神)以来38年ぶりの延長無四死球完封の快投だった。

 会心の当たりが左翼手の頭上を越えた。一塁ベースを回った井端は右手にヘルメットを掲げて跳び上がった。顔をくしゃくしゃにして、力いっぱい腕を伸ばした。吉見が、谷繁が、チームメートが駆け寄り、抱きついてきた。延長10回2死二塁で飛び出したサヨナラ二塁打。サヨナラ打は07年10月4日広島戦以来3度目だ。お立ち台でもポーカーフェースを保てなかった。

 「とてもうれしかった。吉見がいいピッチングをしていたんで、何とか勝ちをつけたかった。本当なら5、6勝しているピッチャー。みんな何とかしたいと思っていた」。

 井端ならではの打撃だった。投手は真田。6日の巨人との対戦で坂本にシュートをサヨナラ本塁打されている。テレビのスポーツニュースで見たその場面が、目に焼き付いていた。チームメートの和田とも、その場面について話をしていた。「だからシュートを狙っていた」。初球は体を開いて内角に食い込む相手の得意球を待った。ボール。「狙いがばれたかなと思った」。2球目の外角スライダーに体が反応した。

 右上腕の内側にはボールの縫い目のあとが赤黒く残っている。13日のヤクルト戦の遊撃守備で打球を当て、途中交代。冷やしたはずの患部はパンパンに腫れ上がり、翌14日の出場が危ぶまれた。だが、1番遊撃でフル出場した。この日も3回に三浦から中前打を放っており、手負いのまま2日連続2安打だ。「今日のほうが痛かった。でも右手がかぶり気味だったのでバランスがよくなったかな」。痛みを冗談で隠した。

 負ければ最下位横浜に0・5ゲーム差に迫られ、最下位転落がちらついていた。危機を脱した落合監督は言った。「こうやって守ってくれれば野球のリズムが出てくる」。守って、守って、最後にチームリーダーの1人、井端が決めた。竜はここからはい上がる。【村野森】

 [2009年5月16日8時1分

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