<中日7-0阪神>◇4日◇ナゴヤドーム

 快投を見慣れたファンも、総立ちの拍手だった。中日チェン・ウェイン投手(24)が阪神打線をわずか2安打に抑える好投。自己最多の12三振を奪い、今季3度目の完封で、5勝目を挙げた。そしてクライマックスシリーズ(CS)出場へのマジック39を点灯させた。

 安心して見ていられた。「阪神は去年も打たれているし、初回は気持ちが足りなかったけど、テンポがよくなって、1イニングずつ投げることを心がけた。最後は疲れていたけど、思い切り腕を振って120%の力で投げました」と納得の表情で振り返る。

 こん身の113球だった。9回2死で迎えた打者は唯一、安打を許していた大和。カウント2-0からのつり球は、この日最速の153キロ。続く4球目も自慢の直球で空振り三振。2回からは毎回の奪三振ショーで、9回は3者連続空振り三振。無四球しかも格好よすぎる締めくくりで、笑顔を振りまきながらナインとハイタッチを交わした。

 主砲金本を完ぺきに封じた。2回に内角高めの150キロで空振り三振に仕留めると、4回も外角高め148キロで空振り三振。この日唯一、得点圏に走者を許した7回も「当たっても仕方ないくらいの気持ちで投げた」という内角低め147キロでまたも空振り三振。自慢の剛速球で、昨年3割7厘と打ち込まれた虎の主砲に仕事をさせなかった。

 左肩の張りで登録を抹消されていた6月上旬。それまで2勝しか挙げていなかった左腕は、球団OBで、入団当時のスカウトだった同郷出身の大豊泰昭氏の声に耳を傾けた。「いくら防御率が良くても、勝ち星がつかないのはなぜなのか。いい機会だから、考えてみなさい」。大豊氏から指摘されたのはピッチングのリズム。心配してわざわざ雨の中、ナゴヤ球場に駆けつけてくれた「日本の父」のアドバイスに、「テンポ良く投げれば攻撃のリズムも良くなる」と、素直に従った。その結果が、この日の完封にも結びついた。

 1位を守った防御率も1・41まで上昇。これからも週の初めは頼れる左腕がチームに白星を運んでくれるはずだ。【福岡吉央】

 [2009年8月5日8時49分

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