<阪神5-0中日>◇4日◇甲子園

 えぐいスライダーが、阪神を「クライマックス」に近づけた。中日キラーの阪神岩田稔投手(25)が、7回を無失点に抑え、対中日4連勝を飾った。これで中日戦は25イニング連続無失点。鋭いスライダーが右打者の、インサイドを遠慮なくえぐった。ナイターでヤクルトが敗れたため、阪神は再び1ゲーム差をつけて単独3位に。日刊スポーツ評論家の山田久志氏は、岩田がチームを勢いづけたとし、その結果として「阪神は残り3試合、すべて勝つ」と言い切った。

 救世主は表情ひとつ変えなかった。09年シーズンも最終章。プレッシャーは?

 岩田は平然と答えた。「いや、別にないです。いつも通り、低めに集めようと思った」。何事にも左右されない強いハートが、激戦続きの虎を救った。

 3日はヤクルトに根負け。同率3位に並ばれ、負けられない1戦となっていた。対戦相手はお得意様の中日。「何かやってくるんじゃないか、と考えた。ちょっとボールを見てきていたんで」。目先を変えた。序盤は決め球のスライダーを狙っていると察知し、真っすぐ、カットボール、ツーシームを軸に組み立てた。後半は一転、スライダー中心の攻めに転じた。打っては激走で三塁打をもぎ取り、7回2安打無失点。三塁を踏ませない内容で7勝目を記録した。

 10勝をあげてブレークした08年のシーズン前。スポーツ情報を見られる携帯サイトへのアクセスを止めた。「見て、何が変わる訳でもないし」。周囲に流されそうな自分に疑問を感じた。流されない-。そんな強い心は今年も変わらない。大阪桐蔭野球部時代の同期にあたる西武中村、親交の深い中日吉見の大活躍にも惑わされなかった。「全然気にならない。自分のことしか考えられないから。他人のことを考える余裕はない」。周囲の状況が変化しようと、マウンドに上がればボールに魂を込めるだけだ。

 他分野の一流選手の調整法を取り入れた。東京から帰阪した1日の甲子園指名練習。岩田は突然目をつぶり、ひとつの目標地点に向かって歩いていった。伊藤トレーニングコーチはこう説明する。「(平衡感覚をつかさどる)三半規管の確認。バランスがうまく取れると投球フォームにも生きる。タイガー・ウッズもやっていたと本で読みましたしね」。

 「良かった」。母校大阪桐蔭が秋季府大会を制したこの日。今季甲子園最終戦に詰めかけた4万6853人に勇姿を披露し、二重の喜びを味わった。これで中日戦は4連勝。今季6戦で4勝1敗、防御率1・42。25イニング連続無失点と抜群の相性を誇る。「あんまり分からない」と自然体を貫くが、すでに竜打線の天敵だ。シーズン中日最終戦で嫌なイメージを再び植え付け、CS進出をひたすら待つ。

 次回登板は中4日でシーズン最終戦、9日ヤクルト戦(神宮)が予想される。「今日みたいな投球を常にできるよう、しっかり調整していきたい」。CS進出へ。岩田が最後の大仕事に挑む。

 [2009年10月5日11時42分

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