<ヤクルト3-1阪神>◇9日◇神宮

 真弓阪神の09年が終わった。今季最終戦でヤクルトに競り負け、クライマックスシリーズ(CS)進出を逃した。7回2死満塁、絶好の逆転機で主砲金本が凡退…。虎ファンの願いも届かず、144試合目で夢は断たれた。就任1年目の阪神真弓明信監督(56)は、後半戦に盛り返したが、開幕から波に乗れず、借金6の4位で5年ぶりのBクラス。守りの野球を掲げながら「やるべきことができなかった」と総括。来季の巻き返しを誓った

 CSへの道が閉ざされた。阪神真弓監督は帽子を脱ぎ、1度グラウンドに向き直ってからお辞儀をして球場を後にした。就任時には数えるほどだった白髪が大半を占める頭を下げた。頭部の変化はシーズン中、周囲に言われるまで気がつかなかった。三塁、左翼席の虎党が声を張り上げるごう音の中で、監督1年目の苦悩をあらわにした。

 真弓監督

 何とか勝ちたかったけどね。望みをつなぎたかったんだけどできなかった

 今季144試合目に勝てば、3位に生き残る可能性があった。負けられない1戦で目にしたのは、今シーズン嫌というほど味わったもどかしさだった。

 真弓監督

 打つ、打たないは調子がある。それよりチャンスをつくる、送るところを送る、転がすところは転がすとか、やるべきことを徹底してやらないと最後の1本は出ない。

 安打数ではヤクルトを上回り、チャンスの頻度は互角。勝敗を分け、天と地ほどの差がある3位と4位の違いを分けたのは、送りバントや進塁打、的確な盗塁などの差だった。ヤクルトができて、阪神ができなかった。この1年を通じて、溝は埋まらなかった。

 真弓監督

 実力以上の力を出すことはできない。それで試合に勝つか勝たないかは、できることを確実にやるかどうかによる。練習も必要だろうし、作戦面でプレッシャーがかからないようにするのも必要。

 7月9日には首位巨人とのゲーム差が15と開いた。就任時に誓った「優勝」の2文字が遠のいた時、真弓監督だけは希望を捨てなかった。フロントから若手登用も勧められたが、ベストメンバーでの勝利追求を主張した。「リーグ優勝を逃しても、日本シリーズに勝てば『優勝』。その可能性はゼロではない」と力説した。最大13・5ゲーム差を離された3位ヤクルトの背中に執念で食らいついた。

 ヤクルトの失速も重なり、野望は現実味を帯びた。実は真弓監督には、CSでの秘策があった。シーズン終盤に勝利を伸ばした能見と岩田の左腕2人を、中3日でフル回転させるプランだ。

 「最後の勝負どころ。中3日で2人がいってくれれば勝機はある。中日、巨人に勝って初めて、もう1つの優勝を狙える」

 勝負手の1つだった岩田の先発試合をものにできなかった。JFKを解体し先発強化を図った。3番鳥谷、5番新井の新クリーンアップを後半戦で貫いた。真弓色を出した監督1年目の挑戦は、最後の最後で足りない課題が浮き彫りになり、果たせなかった。

 都内宿舎に戻り、全体ミーティングを開いた。コーチによれば真弓監督は「この悔しさを忘れてはいけない。この悔しさは来年の優勝で取り返す」と戦い終えたナインを鼓舞した。誰よりも悔しいはずの指揮官が、雪辱の来季優勝に目を光らせた。

 [2009年10月10日11時33分

 紙面から]ソーシャルブックマーク