「秘密兵器」の夢は鳥谷さんとの対決!

 今秋のドラフト6位で広島に入団した川口盛外(たけと)投手(24=王子製紙)が、早大の先輩にあたる阪神鳥谷敬内野手(28)との対戦を熱望した。18日、新人8選手は入団会見などを終え広島市内のホテルを離れた。川口は、かつて鳥谷が在籍した人間科学部スポーツ科学科(現スポーツ科学部)で学び、履修ゼミも同じだった。同じ系譜の先輩を抑え、中継ぎ左腕としての地位確立を目指す。

 ウイークポイントを埋める中継ぎ左腕として期待されるルーキー川口は「頭脳派プレーヤー」だ。早大時代、準硬式野球部で白球を追った異色の経歴を持つ。その一方で学業では“出世街道”を歩んでいた。ソフトバンク和田、阪神鳥谷。在籍した葛西ゼミ(葛西順一教授)には、偶然にも球界を代表する2人も学生時代に学んでおり、川口は虎の鳥谷との対戦を望んだ。

 「(鳥谷さんと)面識はありません。ちょうど(入学時期が)入れ違いだったので。対戦できれば光栄ですよね。(鳥谷さんは)スター。楽しみですね」。

 上達のヒントを探る学生時代だった。卒業論文の題目は『ピッチングにおける体重移動と球速の関係』だった。173センチと小柄で、トップレベルに通用する球速を追い求めていた。「投球動作における体重移動とひざの使い方ですね」と振り返る。軸足である左足のひざの角度に注目。ハイスピードカメラで撮った動作を解析し、重心を落とさない投球フォームのほうが球速も出ることを発見した。

 一方、鳥谷の卒論テーマは『打撃動作における下肢の筋電図解析』だった。理論に裏づけされた打撃フォームを求め続け、今季は自己最多の20本塁打をマーク。川口にとって、鳥谷の存在は発奮材料になる。

 16日の入団会見では「毎日投げたいので中継ぎを希望します」と言い切った。救援左腕が慢性的に不足しているチーム事情もあり、鳥谷を抑えて自信をつければ貴重な戦力になるはずだ。

 この日、広島市内のホテルを離れた。今後は練習拠点の王子製紙グラウンド(愛知)で練習を行う。「アピールしないといけない。高校生とは見られる立場も違う。それを理解して、正月や入寮までの時間を過ごしたい」と話し、来春の沖縄1軍キャンプ帯同を狙う。

 来年1月2日には、実家にほど近い静岡・浜松市内の秋葉山本宮秋葉神社で願掛けするつもりだ。「『社会人に行きたい』『若獅子賞(都市対抗の新人賞)をとりたい』『プロに行きたい』という願いはかなった。縁起がいいですから」。速球やキレのあるスライダーを武器とする技巧派左腕は、見果てぬ夢を抱き、プロへの第1歩を切る。【酒井俊作】

 [2009年12月19日10時31分

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