中日のドラフト3位中田亮二内野手(22=亜大)に「特別育成プラン」が持ち上がった。単位取得のための試験で遅れて沖縄入りした“ブーちゃん”は3日、初めて2軍キャンプに合流。午後の初フリー打撃で川相昌弘2軍監督(45)の度肝を抜くテクニシャンぶりを見せつけた。長所と体力不足の短所が極端なルーキーのために、落合博満監督(56)と川相2軍監督は2月中は実戦に起用せず、体力づくりに専念する特別措置を決定した。

 いきなり見せ場をつくった。雨のため午前中に体育館で行われた体力強化を何とかクリアすると、午後は屋内打撃ケージで初のフリー打撃を披露した。巨体に似合わない小さなテークバックから手首をやわらかく使ってバットのヘッドを走らせる。コンパクトな振りでほとんどのボールを正確にとらえた。打球は115キロの体重が乗ったように力強く飛んでいった。

 初めて打撃練習を見た川相2軍監督がうなった。「振りがシャープ。バットの出が速い。手が速い。オレにはあんな打撃できない。長年やっているけど、ああいうタイプは見たことがない。楽しみだね」。90年代の巨人でレギュラーを張った経験者をして「初めて」と言わしめた。大学日本代表の4番を務めた技術力はプロの目で見てもやはり別格だった。

 球界日本人最重量選手は長所と短所が極端に同居している。1月の合同自主トレでは初日から他の選手についていけず、体力面の不安を露呈した。また大学の卒業単位取得のため満足な自主トレができない上にキャンプにも2日遅れで合流することが決定し、不安はさらに増大した。そんなブーちゃんについて川相2軍監督は落合監督とのトップ会談で決定した「特別育成プラン」を明かした。

 「彼はキャンプ1カ月で体を慣らしてくれればいい。実戦は向こう(名古屋)に帰ってからでいい。体力の不安も、焦りもあるだろうからケガをさせないようにしたい」。他の選手が2月中の実戦でアピールしようとしのぎを削る中、中田はじっくり体力をつくる。実戦は土台ができてから…。まさにブーちゃんのペースに合わせた特別措置だ。

 空が暗くなった午後5時すぎ、長い1日が終わった。「不安や緊張はありましたが、いい感じで動けた。打撃はインパクトで力を伝えることを意識しています」。じつは試験勉強で運動量が減ったせいで、体重は3キロ増の118キロ。観る者を飽きさせない“ブーちゃん劇場”が幕を開けた。【鈴木忠平】

 [2010年2月4日10時26分

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