今後に期待が持てる88球だった。5日ぶりのブルペンに入った菊池雄星投手(18=花巻東)は、捕手を立たせたまま、腕を振ることに全力を注いだ。制球にばらつきはあっても、フォームに力感が戻り「頭で考えていることと、体で動いていることが一致してきた。突破口というか、道が開けたんじゃないかと思います」。スラスラと前向きな言葉が出てきた。

 集中が途切れそうなシーンがあった。左手首につけたブレスレットを、潮崎投手コーチから「試合で使わないだろ」と言われて外した。さらに審判の指摘で、試合用グラブが公式戦で使えないことが判明。途中でグラブを交換する場面もあった。理由は、捕球するネット部分(ウェブ)の外側に入れた花巻東野球部のオリジナルマーク。野球規則では「競技用具に製造業者以外の宣伝はつけてはならない」とある。マークは初心を忘れないよう自ら依頼して入れたが、パ・リーグ前川審判部長は「学校のコマーシャルと取られかねない」と説明した。

 それでも、がむしゃらに腕を振り続けた。渡辺監督が「力が入ってきた。いつもより腕が下がっていい時のフォーム」と言えば、潮崎投手コーチも「今日のような投球を続けてくれれば、次に進めるかな」と及第点を与えた。18歳らしい、なりふり構わない投球が、首脳陣の評価を変えたことは確かだった。【亀山泰宏】

 [2010年2月18日8時42分

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