<広島3-6阪神>◇30日◇マツダスタジアム

 阪神マット・マートン外野手(28)が集中力を研ぎ澄まし、丸太のような両腕に力を込めた。2点差に迫られた6回。先頭で横山の初球、外角高め135キロ直球をたたき、軽々と左中間席へ運んだ。18打席目にしての来日第1号は奥のコンコースで跳ね、場外に消えた。球場外周をランニングしていた50代の男性がそのまま持ち帰ってしまった。「もちろん、特別な思いがあるよ。ずっと忘れることはないと思う。ボールが返ってこなくてもホームラン自体はなくなる訳じゃない。仕方ないよ」と割り切った表情で話した。この日の4安打は右前、左前、左中間に中前と、すべて違う方向に放った。前評判通りの広角打法でしっかりとリードオフマンの役目を果たした。

 この日の試合前には和田打撃コーチから右肩が下がる悪癖を指摘され、フリー打撃後にティー打撃を繰り返した。即座に微修正を終え、結果を出した。「毎日結果は約束できないけど、いい状態を続けていくことが大事。今のところできているかな」と謙虚に話す28歳。開幕から4試合連続安打を記録し、打率は5割。試合後、記念球を持っていた男性がラジオで状況を知り、夫妻で広島市内の選手宿舎を訪問。ホームランボールを直接受け取り、顔をくしゃくしゃにした。【佐井陽介】◆ブラゼルは浮かれず

 阪神7番クレイグ・ブラゼル内野手(29)が2打席連発でチームを勢いづけた。2回には内角のシュートをライナーで右翼席に、3回はカーブを右中間席に運んだ。ストッキングをひざ下まで見せるクラシックスタイルで臨んで2戦連続アーチ。「これが効果があれば、続けるよ」と笑った。質問が終わると「マートンのホームランボールが見つかるように、記事に書いてくれないか?」と、3安打に浮かれることなく同僚への心配りを見せた。

 [2010年3月31日9時39分

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