<巨人7-9阪神>◇13日◇東京ドーム

 トラは死なず。阪神が34年ぶりの大逆転勝ちで伝統の一戦を制した。巨人4回戦(東京ドーム)で6点をリードされたが、桜井広大外野手(26)の逆転3ランなど5アーチの1発攻勢でひっくり返した。巨人戦での6点差の逆転は76年9月7日(甲子園)以来で、点差は最多タイになる。劇的勝利で今季初の3連勝を飾り、貯金を再び1として3位に浮上した。

 34年ぶりの打球は、ゆっくり、ゆっくりと左中間席へ向かっていった。阪神ファンの黄色いメガホンが力強く揺れた。逆転3ラン。敵地が地響きで揺れた。桜井はうれしさをかみしめながらダイヤモンドを回った。一塁側ベンチ前、最後は181センチ、94キロの巨体をブラゼルに抱き上げられた。引き締めていた表情が、一気にクシャクシャになった。

 2点を追う8回1死一、二塁。「ああいう時はどんどん振っていこうと思った」。巨人3番手の豊田の初球、真ん中高めの125キロフォークをフルスイングした。3月28日横浜戦以来、16日ぶりの3号は大逆転劇を決める1発となった。「ずっとヒットが出ていなかった。迷惑をかけていたので期待に応えたかった」と力を込めて言った。

 3回までに6点のリードを許したが、選手の集中力は切れなかった。反撃ののろしを上げたのは3番鳥谷だった。6回無死一塁、藤井の直球を右中間席に打ち込んだ。「どうにか次につないで、チームにリズムを持って行きたかった。ホームランは出来すぎです」。和田打撃コーチが「ムードが変わった」という2ランで4点差。さらに1死走者なしで5番新井が左越えソロを放ち3点差。そして7番ブラゼルも続いた。

 1死一塁で2番手久保から中越え2ランを放ち1点差とした。「チームの流れも良かった。四球の後だったので初球から思い切りいくと決めていた」という読み勝ちの1発だった。そして8回に桜井とマートンの2発で勝利を呼び込んだ。

 チームでは04年以来となる1試合5アーチでの勝利。阪神真弓監督は「すごい。勢いが止まらなくなった。追い越したら、絶対、勝ちたいゲームだった」と興奮しながら言った。

 5球団との対戦が一巡した11日の時点で、7勝7敗の勝率5割。城島以下の下位打線が目立ったが、クリーンアップはまだ力を発揮していなかった。特に鳥谷のバットは湿っていた。それでもこの日、真弓監督は「みんなが一斉に打ったときの方が怖いよ。今年、鳥谷は絶対にやるよ。去年、あれだけ苦労して、3番の座をつかんだんだ。代えてどうする?」と話していた。09年は不振で代打を送られる場面もあった。その苦難を乗り越えた男を信頼していた。

 打線がつながっての3連勝。巨人戦の連敗も2で止めた。真弓監督は「(鳥谷と桜井の)2人は調子が悪くて悩んでいたが、あの1発で吹っ切れると思う」と期待を込めて言った。歴史的な逆転劇が猛虎ひょう変への引き金になる。

 [2010年4月14日9時33分

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