<ヤクルト3-9阪神>◇28日◇神宮

 アニキが12年ぶりの1発を放った。右肩痛でスタメンを外れている阪神の金本知憲外野手(42)が、ヤクルト戦の8回に代打でバックスクリーンへの4号ソロを放ってリードを6点に広げてダメを押した。広島時代の98年8月以来の代打アーチは歴代3位タイの年長記録で、41歳の真弓を抜く球団記録となった。首位巨人とは再び3ゲーム差となり、鉄人の1発が追撃ののろしとなる。

 割れんばかりのアニキコールが、心に染みた。試合終了直後の左翼ファウルグラウンド。球場通用口にたどり着いた金本を待っていたのは、ヒーローインタビューの声をかき消すほどの大声援だった。98年8月21日の巨人戦以来、4268日ぶりとなる代打本塁打。“陰のヒーロー”は照れくさそうに、左手を挙げて応えた。

 5点リードの8回。先頭打者で、連続試合出場を1644試合へ伸ばす代打で登場すると、球場のボルテージは一気に上がった。カウント1-1からの3球目。ヤクルト2番手高木の外角低めフォークボールをバックスクリーン右へと運び去った。スタメンを外れて7度目の代打での1発は、通算2300安打となった。

 「使ってもらっている以上は結果を残さないとね。本当、素直にうれしいです」。連続試合フルイニング出場を継続中だった11日のヤクルト戦(甲子園)以来、11試合ぶりの4号ソロ。ダイヤモンドを回っている間は一切表情を崩さなかったが、真弓監督やチームメートの出迎えを受けると、さすがの金本も一気に表情が和らいだ。ブラゼルとはお互いの両腕をぶつけ合い、喜びを爆発させた。

 球界に衝撃が走った運命の1日から、もう10日がたった。連続試合フルイニング出場が1492試合で止まった時点で金本の右肩は、まったく投球ができない状態だった。当初は「(完全回復まで)2カ月はかかると思った」と長期離脱の覚悟も決めたが、わずか10日の間に「近々投げられると思う」と言うまでに回復を見せている。

 以前は負担の軽いゴムチューブを利用して肩のインナーマッスル強化に励んでいたが、現在は1キロもするダンベルを使って右肩周辺の筋肉を刺激。来るべき先発復帰に向けた“準備”を、着々と進めている。

 金本のダメ押しの1発に、代打起用を続ける真弓監督も「ああやって1打席で(結果を出すのは)難しいかもしれんが、うまくヒットが出始めた。タイミングが合ってきた」と脱帽した。これでチームは4月2試合を残し、3、4月間の勝ち越しを決めた。首位巨人とのゲーム差も3に。チームの勢いを加速させるには、やはりアニキの援護が欠かせない。【石田泰隆】

 [2010年4月29日9時16分

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