<日本ハム2-4阪神>◇29日◇札幌ドーム

 阪神藤川球児投手(29)が笑顔でくれたウイニングボールを、鶴直人投手(23)は頭を下げて受け取った。念願のプロ初勝利。「球児さんが出た時から、今日は勝てると思ってました。いろいろ大変なこともありましたが、目標にしてきたんで、本当にうれしい」と、タンチョウヅルも飛来する北の大地で羽ばたいた。

 ダルビッシュとの投げ合いに勝ち、価値は一層高まった。2回に3連打や押し出しなどで2点を許した。これまでなら一気に崩れ落ちるが、踏ん張った。「リリースポイントの低めを意識した」と言うように、ハートは熱く、頭はクールに修正。以後、得点を与えず6回2失点で味方の逆転を呼び込んだ。

 すべては1学年上の「尊敬する先輩」への意地だった。大阪・忠岡ボーイズ時代の9年前、全羽曳野のダルビッシュに投げ勝って以来の再戦。プロでは日本を代表するエースに上り詰めた右腕に対し、大半が2軍生活。天と地ほど差が開いた。「向かって行く気持ち。必死なところもあったし勝利に貢献したかった」と、推定年俸650万円が3億3000万円に投げ勝った。

 ひじ痛、肋骨(ろっこつ)骨折、腰痛。戦力外の危機におびえた日々を励ましてくれた両親。「ずっと心配ばかりかけてきた。野球で親を喜ばせたかった。ウイニングボールは親に贈ります」。さあ一気のスターダムへ。本当の「鶴の恩返し」はこれから始まる。【松井清員】

 [2010年5月30日8時49分

 紙面から]ソーシャルブックマーク