<巨人5-0中日>◇18日◇東京ドーム

 4年目の中日堂上直倫内野手(21)が、巨人戦でプロ初安打を記録した。故障離脱中の井端の代役として7番二塁で先発出場。プロ8打席目となる8回の打席で、中前打を放った。06年に3球団競合の末に入団したドラフト1巡目が、第1歩を踏み出した。チームは内海に2安打完封負けし、ゲーム差は7に拡大。逆転優勝に向け状況は厳しくなってきたが、今後の希望となる1本となった。

 くすぶっていた逸材が、ようやく最初の1歩を踏み出した。8回、そこまで1安打に抑えられていた巨人内海のやや外寄りの球を振り抜いた。打球は鋭くセンター前に弾んだ。「出ましたね、やっと…。打った瞬間、抜けたと思いました」。プロ4年目、通算8打席目での初ヒットに思わず本音が漏れた。

 06年の高校生ドラフト、当時、NO・1スラッガーと言われた金の卵をめぐって中日、巨人、阪神の3球団が1巡目指名で競合した。抽選の末、交渉権を獲得したのは元投手の父・照さん(59)、現外野手の兄・剛裕(25)と同じ地元中日だった。運命の糸に導かれるように入団したが、3年間で1軍出場は5試合。天才と言われた打力を発揮できないまま月日が流れた。

 その間に堂上直の外れ1巡目で巨人に入団した坂本は球界を代表する選手に成長した。くしくもこの日、相手の遊撃には坂本がいた。3年間で2人の間には大きな距離ができていた。「自分をアピールすることに必死なので(坂本を)意識する時間はない」。それでも、堂上直は井端が離脱中のチャンスを生かそうと目の前だけを見据えている。

 落合監督は堂上直についてこう語った。「現状出るところはあそこ(二塁)しかない。オレがデビューした場所と同じ。だからと言ってレギュラーを取るか、取らないかは本人次第」。31年前、落合博満も二塁でチャンスをつかみ、3冠王まで駆け上がった。4年目でめぐってきた最大の好機。堂上直の本当の戦いはここからだ。【鈴木忠平】

 [2010年6月19日11時7分

 紙面から]ソーシャルブックマーク