エース格と言わしめた。巨人のドラフト1位ルーキー沢村拓一(ひろかず)投手(22=中大)が15日、紅白戦に先発し2回を無安打無失点で圧巻の投球を見せた。直球の最速はこの時期では異例の149キロをマーク。スライダーとフォークの制球もよく、全17球でボールはわずか4球だった。川口投手総合コーチは「エース」という表現を使うなど、評価はとどまるところを知らない。次回登板は20日の楽天戦が濃厚。開幕ローテーション入りまで突っ走りそうだ。

 6人目の打者、古城に2球連続で直球がボールになった。カウント2ボールからの3球目。外角のボールゾーンから小気味よく内に曲がった沢村のスライダーが、ストライクゾーンをかすめた。是が非でもストライクが欲しい場面。冷静にプレートを外し、サインを確認するまでして投じた球種だった。カウント2ボール1ストライクから内角直球で2-2に。最後はフォークで空振り三振。初の紅白戦で見せた、ローテーション投手の投球だった。「いいところも悪いところもありました。まだまだです」と、22歳は慢心することはなかった。

 古城へのフォーク。実は直球のサインを間違えたものだった。「サインミスはしないようにしないと」と苦笑いしたが、空振りは精度の高さを物語った。13日のブルペンで初披露し、ほとんど抜けていたフォーク。それをマウンドでしっかりと修正。最速149キロも単純に驚異的だが「実戦向き」なのがより頼もしい。

 変化球の制球に課題を残したブルペンと、実戦マウンドでは格段の違いを見せる。川口投手総合コーチからは「全ての球が素晴らしい。エースというのは全球が勝負球になる投手。その域に達するくらい、全ての球が勝負球だよ」と言わしめた。この日に登板した、開幕投手候補の内海、東野を差し置いて絶賛の言葉を並べられた。

 原監督は特別な賛辞を言わなかった。分かりきった孝行息子に、言葉はいらないと言わんばかり。堂々の投球で「巨人沢村」としての晴れ姿は栃木の実家への親孝行にもなった。試合前、両親の観戦については「たぶん来ないです。(CS放送で)見てると思います」と話していた。一生懸命さはしっかりと伝わったはず。「向上心を持っていかないと。満足することはないです」と、力強く言い切った。最速157キロ右腕は、まだまだ進化する。【斎藤庸裕】

 [2011年2月16日9時7分

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