「8回の男」が圧巻の0封デビューだ!

 阪神にFA移籍した小林宏投手(32)が21日、紅白戦に初登板。縦スライダー、フォーク、チェンジアップを魔術師のように駆使し、1回を1安打無失点に抑えた。真弓明信監督(57)は「日本シリーズを抑える技術を持っている」と絶賛。セットアッパーはお任せだ。

 どんな状態でも抑えてしまう。今オフ最大の補強、小林宏が1発“快投”だ。阪神入団後、初実戦でベテランらしさを見せた。

 小林宏

 低めの制球を意識したけど、良い球と、悪い球がはっきりしていたので、全体的にレベルアップしたい。

 あくまで照準は3・25。まだまだ、調整段階だ。直球も最速は143キロ。制球、変化球の精度もシーズン中に比べれば劣るのは当然。だが、紅白戦とはいえ、「8回の男」はゼロに抑える仕事をまっとうした。

 真骨頂は、2死から坂に右前打を許してからだ。ポーカーフェースは変わらない。平野に内、外角にスライダーを投げ分け、カウント2ボール2ストライク。縦に変化する独特の軌道を意識させ、最後はフォークで一ゴロに仕留めた。山口投手コーチは「フォーク、スライダー、チェンジアップが見分けにくいね」と舌を巻いた。指揮官の頭の中でも、イメージがふくらんだ。

 真弓監督

 まだまだ本来の思うような球はいっていないが、去年はずっと投げていた投手。自分では満足いくボールじゃなくても、日本シリーズを抑える技術を持っている。

 昨年はロッテで守護神として29セーブを挙げ、日本一に貢献した。9月に調子を落としたが、ポストシーズンは踏みとどまり、計8試合で1勝0敗4セーブ。存在感を見せつけた。

 生命線は縦の変化だ。プロ入り4年目に転機が訪れた。当時の球種は直球、カーブ、フォーク。高卒で入団したとはいえ、2軍生活に終止符を打とうと必死だった。

 「直球とフォークだけではしんどい。もう1つ変化球が欲しい」。

 あるとき、先輩投手のスライダーに目を奪われた。自分と同じような身長183センチの武藤潤一郎が、上から投げ下ろすスライダー。横に滑るというより打者の手元で落ちる軌道で、おもしろいように打ち取っていた。徹底研究が始まった。直接指導を受けたわけではない。目で見て、試し、自分のものにした。苦労して手に入れたことで、絶対の自信が生まれた。

 「見て覚えました。スッとは投げられなかったですから練習しましたから」。

 01年シーズンから、1軍に定着した。ここぞの場面で投げる縦スライダーは、メジャー複数球団から注目されるようになった。その力を、たった1度の紅白戦で見せつけた。

 夢のメジャー挑戦はかなわなかった。だが、新天地で求められる仕事がある。2年連続の美酒を浴びるために。虎のコバヒロの右腕がうなる。【鎌田真一郎】

 [2011年2月22日10時53分

 紙面から]ソーシャルブックマーク