<西武3-4ソフトバンク>◇9月30日◇西武ドーム

 ソフトバンクが2連覇に王手をかけた。秋山野球の申し子、福田秀平外野手(22)が、プロ初アーチ&決勝タイムリーの活躍をみせ、西武に逆転勝利。2位日本ハムがロッテにサヨナラ負けしたため、優勝マジックは1となった。今日1日、秋山幸二監督(49)が古巣西武の本拠地で舞う。

 西武ドーム名物の長い階段を上り終えると、移動バスの前で、秋山監督を王球団会長は待ち受けていた。握手を交わしながら、王球団会長の野太い声が飛んだ。「いよいよ明日だな。(マジック2でも)そのつもりで行こうや」。その直後、千葉で日本ハムが敗戦。マジック1、目の前の試合に勝てばVという最高の舞台が整った。

 秋山チルドレンが会心の逆転勝利を運んできた。3点ビハインドの5回。反撃のノロシを上げたのは、プロ5年目の福田だ。両打ちだったが、打力を生かすために秋山監督の考えで昨オフから左打者に専念。2ボール2ストライクから、内角スライダーを右翼席へ。うれしいプロ初アーチとなった。

 福田

 5年かかったので長かったけれど、最高。(ホームランボールは)お母さんに贈りたい。とにかく1日1日必死です。

 秋山監督

 やっと出たな。もともと打てる資質がある。いつ打ってもおかしくなかった。

 通算437本塁打の秋山監督は、追い込まれた後の打撃について「直球待ちを基本に、あとは変化球をひっかければいい。リストを返して打つんだよ」と語っていた。左右の違いはあるが、福田のアーチは、まさに本塁打の極意を伝授されたものだった。

 秋山監督の思いが、各選手にちりばめられている。逆転した7回の4連打が、その結晶だ。ベテラン不在の中、4番を託される松田が、右中間二塁打。昨年の大不振を踏まえ、ミートポイントの変更を指示され続けた5番長谷川が、左翼線に同点適時打。左翼線二塁打でつないだ6番多村は、今季ケガとスランプに苦しんでいるが、秋山監督は2人だけで話し合う場を持ってケアしてきた。最後は福田が、泥臭く一、二塁間を抜く決勝打だ。

 競争と結束。絶妙なバランスが、このチームにはある。体のあちこちに痛みを抱え、現在右翼を福田に奪われている格好の多村が「昨日も城所と(福田)秀平と3人で、そろそろ1号って話してたんですよ。助言できるところはしています。(ケガで不本意なシーズンは)悔しいけど、前を向いて、やるだけ」と言った。

 秋山監督にとって古巣西武の本拠地で胴上げチャンスが巡ってきたのは、何かの縁か。今日1日、ゴールテープを一気に突っ切る。【松井周治】

 ◆福田秀平(ふくだ・しゅうへい)1989年(平元)2月10日、横浜市生まれ。多摩大聖ケ丘から06年高校生ドラフト1巡目で遊撃手としてソフトバンク入団。今季から外野手登録。1軍デビューした昨季は主に代走と守備固めで44試合出場。右投げ左打ち。181センチ、74キロ。