ソフトバンク松中信彦外野手(38)が下交渉で2年契約を断ったことが6日、分かった。7年契約の最終年を迎え、球団側から新たな2年契約を打診されたが、完全復活をかけて1年勝負を決断した。平成唯一の3冠王は打率3割と30本塁打を今季ノルマに設定し、自主トレ先のグアムに単身で渡った。

 福岡空港のレストランでカツカレーを腹にかき込んだ。自主トレ出発日の儀式を終えた松中は「やりがいは年々増している。1年1年の勝負」と曇りのない表情で搭乗口へ消えた。

 契約未更改ながらの笑顔。代理人の高橋弁護士は契約交渉について合意間近とした上で、「複数年契約でもというお話もいただいたが、今回は交渉の時間がないこともあり1年でとなった」と明かした。

 06年から4年目まで固定年俸5億円プラス出来高、5年目以降は変動する7年契約を結び、最終年の今年が1年契約なのは既定路線。それでも新たな2年という期間保証を蹴ったのは、復活にかける決意だった。

 昨年9月の右膝骨折後は代打専念ながら、88試合で5年ぶりに3割超えとなる打率3割8厘をマークし、13年連続2桁の12本塁打。クライマックスシリーズの代打満塁弾でファンの心をわしづかみにした。この日は自ら「もう限界と言われ、ボールも統一球に変わる中で成績を残せたし、少しは復活できたかな」と語った。だから1年勝負でそれを証明する。

 昨季途中に1本足からすり足打法に戻し「すごく良くなった。開幕からあれだったら…」と思うほど手応えをつかみ、長年の経験から「3割30本が目安」と設定ノルマを導き出した。

 グアムのメニューは中長距離から短距離中心に変える。今年、選手は1人だけ。「若手と競うよりタイムとの競争できつさは変わらないし、それ以上かも」。28日の帰国後はその足で契約書にサインする。2年連続日本一に自分の完全復活が必要だと、松中は分かっている。【押谷謙爾】