<ロッテ8-9日本ハム>◇9日◇QVCマリン

 日本ハム中田翔内野手(23)が、レギュラーシーズンを4番打者でまっとうした。今季最終戦となった9日ロッテ戦も4番に座り、4打数2安打1打点で勝利に貢献した。全試合で先発4番出場は球団史上29年ぶり3人目。まさに不動の4番が、クライマックスシリーズのファイナルステージ(17日~、札幌ドーム)に向け、“完走”で弾みをつけた。

 ホームラン王争いを演じた若き主砲・中田が、自慢の長打力ではなく、“珍打”でレギュラーシーズンを締めた。1点差に迫り、なお5回1死一、二塁の好機。ロッテ成瀬の外角スライダーにバットを合わせて二遊間に転がすと、そのままボールは二塁ベースへコツン。捕球しようとした野手をあざ笑うかのように、グラブをすり抜けて大きく跳ねた。「ラッキーでしたね。もう、それしかないです。勝って締めることができてよかった」。シーズンを終えた達成感と勝利につながる“秘技”に、表情は緩んだ。

 笑顔で終わった今季のスタートは、最悪だった。栗山監督からは、就任当初から4番で起用することを告げられていた。オープン戦打率3割6分8厘で滑り出したが、開幕と同時に、快音は止まった。24打席ノーヒット。その後も低空飛行を続け、5月を終えた時点で打率1割6分9厘と打線のブレーキになっていた。「使ってもらってるのに、情けない」。ストレスが原因で、肌荒れにも悩まされた。

 それでも打順は変わらなかった。「翔!」。指揮官はどんなときでも、下の名前で明るく声を掛けてくれた。「優勝して恩返しをしたい。それしかなかった」。期待に応えるために、休日返上で汗を流した。シーズン全試合を4番で全うしたのは、球団では63年の張本(150試合制)、83年の柏原以来、29年ぶり3人目の快挙。打率2割3分9厘、24本塁打、77打点の最終成績は「満足していると言えばウソになる。得点圏で打てなかった。そこはどうにかできたところ」と手放しでは喜べないが、栗山監督を胴上げすることができた。「優勝できたので、充実した1年、幸せでした」と口にした。

 昨季は原因不明のめまいに襲われ、1試合を欠場。大きな悔いと、不安を残した。現役時代、メニエール病に悩まされた栗山監督からも「相談に乗るぞ」と気遣われていたが、心配は杞憂(きゆう)に終わった。代走を送られて退いたことは2度あったが、初めて全試合に出場。「全部出られたことはうれしく思います。終わってみれば、早かった」と一瞬だけ感慨に浸った。

 17日からのCSファイナルSへ向けて、今日10日にはフェニックスリーグが行われている宮崎に移動。休むことなく、バットを振る。「しっかりとその日に合わせて調整をして、全力で、勝ちに行きたい」。不動の4番の真価が問われるのは、ここからだ。【本間翼】

 ▼日本ハム中田が今季の全144試合で先発4番を務めた。シーズン全試合で4番を務めたのは、球団史上3人目。前身東映時代の63年張本勲が最初で当時150試合制だったが全試合に出場し、打率2割8分、33本塁打、96打点。83年には、中田と同じ背番号6だった柏原純一が全130試合に4番で出場し、打率2割8分2厘、26本塁打、89打点。