すべての重圧をはねのけて一流になる。昨夏の甲子園で大会新の22奪三振を記録した桐光学園(神奈川)・松井裕樹投手(2年)が10日、川崎市内の同校で練習を公開し、注目される環境を力に変える決意を示した。巨人、DeNA、ヤクルトなどが1位候補に挙げる中、進路に関しては未定としながらも、プロへの憧れも口にした。まずは今夏の全国制覇を第1の目標とし、課題であるスタミナ強化に取り組んでいく。

 プロへの思いを聞かれると、松井ははにかんだ笑顔で答えた。「小さい頃から憧れがあります」。その上で、進路に関しては現段階では未定とした。「(監督、両親と)話していないのでわからない」と話すにとどめ、プロも進学もあらゆる可能性を考えているか?

 との問い掛けには「はい」と答えた。

 現在、巨人、ヤクルト、ロッテなど複数球団が1位候補に挙げている。「注目されるのはうれしい。こういうプレッシャーを感じられるのは幸せ。そういうのをはねのけないと一流にはなれない」と周囲の期待を練習へのモチベーションにしている。昨夏の甲子園では22奪三振の記録を作り、注目された。「小さい頃はジャイアンツファン。好きな選手は高橋由伸選手だった。今は(好きな球団は)特にないです」と憧れの世界からの評価をフラットな心境で受け止めている。

 今年の目標は「世界一の左腕になること」。世界一とは大リーグ挑戦なのかと聞かれると「全然考えてないんですけど、とにかく誰にも負けたくない」と言った。まずは今夏の全国制覇に照準を合わせる。

 当面の課題は夏の連投にでも耐えられるスタミナだ。昨夏決勝でもひょうひょうと投げ抜き、優勝を果たした大阪桐蔭・藤浪の体力に衝撃を受けた。準々決勝、敗れた光星学院(青森)戦では連投での疲労が腕に出た。「投げても疲れない身体をつくる。決勝戦で完投しても体力が余るくらいのスタミナをつけたい」。今はダンベルやチューブを使い、振れなかった上腕を鍛えている。

 また課題のフィールディングを克服するためフォームの修正にも取り組む。松井といえば身体をひねるダイナミックな投げ方が特徴だ。しかし投球後に左足が遠くに着地してしまうため、打球に反応するのが遅くなると分析。「投げた後にしっかり止まれるフォームを目指す」と体重移動を見直し、“ニュー松井”を模索している。

 野呂雅之監督(51)は、今春の大会終了後に最初の進路面談を行う考えを示した。「もう1度あそこ(甲子園)で野球をしたい」と話す左腕は今秋の決断を見据え、ただひたすらに深紅の優勝旗を目指す。【島根純】