WBC日本代表の山本浩二監督(66)や日本ハム稲葉篤紀内野手(40)らの前で、東京6大学の法大にお家騒動が勃発した。12日、同大のOB総会が都内ホテルで開催され、金光興二監督(57)と田中英樹先輩理事(53)をOB会から除名する動議が出された。動議の即時の決議は見送られたが、同会幹部が現場の首脳陣との確執を告白。今後、現役の監督がOB会を除名となる異例の事態に発展する可能性まで出てきた。

 OB総会が行われた部屋からは、質問者の声やそれを遮る声など、怒号が響き渡る異常な事態となった。金光監督は欠席し、野球部OBではない佐藤典人部長(66)は途中退席を命じられた。会議中には金光監督と田中先輩理事をOB会から除名する動議が出された。今後、OB会執行部と両者が話し合って解決策を探る予定だが、現役監督の除名という最悪の事態となる可能性が出てきた。

 ものものしい内容を、総会終了後に池田周弘副会長(66)が説明した。同副会長によると、昨年はじめ、田中先輩理事の就任を、OB会に相談なしに佐藤部長らが決めたことが対立の発端だという。OB会は、昨年2月に大学側に佐藤部長の退任要求と、東京6大学連盟に先輩理事の田中氏の退任要求を行ったが、ともに却下されたという。

 その上で、同副会長は「佐藤部長、金光監督、田中理事の名前で、白紙撤回と謝罪がなければ(法大OB会の)4名(五明会長、山本、山中、池田副会長)を告訴するという文書がきた」と説明。4人の中には、OB会副会長を務めるWBC日本代表の山本監督の名前も入っていたという。昨年就任10年目を迎えた金光監督が長期政権となったため、退任を求める意見を大学側に伝えたが、返答がなかったことにも不信感を募らせているとした。

 監督、部長の人事権は大学の総長にあり、OB会は監督交代時には推薦する立場にある。大学側の立場の佐藤部長はノーコメントを貫いた。金光監督は今季も指揮を執る見通しで、7日の始動日から野球部の練習に参加している。今回の騒動が、自身の進退問題に発展することは否定。「OB会に参加しなかった理由は私なりにありますが差し控えさせて下さい」と、現場にこれ以上の混乱を招かないように配慮する。「私も法政大学で育ててもらって、やっているわけですから。(OB)の一員として、このままでいいとは思っていません。いい方向にいくように、努力しないといけない。(OB会幹部との)話し合いの場にはきちんと対応します」と話した。

 このOB総会の最後にはWBC日本代表の山本監督、高代コーチ、稲葉らの壮行会が行われたが、思わぬ内紛劇が起きてしまった。

 日本代表の山本監督は「執行部の1人ではあるけど、詳しいことは何も分からない」と、困惑の表情を浮かべた。この日の総会では母校への思いを再確認した様子で「法政野球部に強くなってほしいという思いはみんな一緒。OBとして手助けできることはないかと、いつも考えているわけやから」と話した。

 ◆法大硬式野球部

 1915年(大4)創部。30年秋に初優勝。昨秋までリーグ最多44度の優勝を誇る。全日本大学選手権は最多の優勝8度。明治神宮大会優勝3度。OBに故鶴岡一人氏、関根潤三氏、江川卓氏らがおり、プロ野球選手を多数輩出。金光監督は03年に監督就任し、今年で11年目。グラウンド、合宿所の所在地は川崎市中原区。

 ◆先輩理事

 東京6大学リーグの役職の1つ。各大学がOBから1人ずつを選出し、チーム運営などに携わる。ちなみにリーグの理事は各大学の部長、先輩理事、監督、主将、マネジャーから構成される。