<オールスターゲーム:全セ3-1全パ>◇第2戦◇20日◇神宮

 第2戦も「大谷祭」だった。投手と野手の「二刀流」に挑戦している日本ハム大谷翔平投手(19)が「1番右翼」でフル出場。1回、右中間二塁打を放ち、球宴3打席目で初安打をマークした。阪神藤浪とのルーキー対決がお預けとなったのはちょっと残念…。

 157キロの剛腕でオールスターデビューしたばかりのルーキーが、今度はバットで「第2幕」の開演を告げた。先頭打者で起用された大谷が1回、巨人菅野の150キロ直球を、右中間へ運んだ。二刀流ルーキーの初安打。「真っすぐかなと思ってました。1本打ててよかった。ホッとした部分がありました」。二塁に滑り込むと、喜ぶ味方ベンチを視界に捉え、照れたように、はにかんだ。

 試合開始の1時間以上前から、神宮をどよめかせていた。全パ栗山監督が仕掛けたサプライズ。スタメン発表で「1番ライト大谷」のコールが響いた。高卒ルーキーでは、史上初めてのトップバッター起用。同監督は「(プロ野球は)ファンが1人もいなかったら意味がない。できることであれば一生懸命やるし、(期待に)応えていかなければ」。相手は同じルーキーの菅野や、阪神藤浪が登板してくることが決まっていた。対戦機会をつくるために「たくさん打席に立たせるしかない」と、決断した。起用法を伝え聞いた大谷ですら、当初は「信じてなかった」という大胆さだった。

 打順の巡り合わせで、結局藤浪との対戦は“お預け”になった。ベンチではソフトバンク内川にも「残念だな」と声を掛けられたが、大谷は「しょうがないです」とサバサバ。その理由は、それ以上の収穫をつかんでいたからだ。

 菅野を打ったことに、意義があった。出場投手一覧を眺め、対戦したい相手を「菅野さん」と即答した。理由は「やったことがないので」と明白だった。1年目の今季を、プロで活躍するための準備期間と位置づけている。VTRやデータで相手の傾向を熱心に勉強しているが、それは次回対戦で攻略するためだけではない。「まだ1年目で知らない投手ばかり。(研究しておけば)来年以降にも生きると思うので」。高卒新人でありながら、長期的なビジョンで人生設計を行う。その過程の中で、交流戦で当たることのなかった菅野と対戦したこの日の1打席は、貴重な経験だった。

 シーズン中にもなかった、登板翌日のフル出場。「良かった部分と悪かった部分がありました。これを後半戦にどう生かせるかだと思います」と先を見据える。お祭りのムードを楽しみながら、その先の真剣勝負のことは忘れない。大谷のすごさは、目に見えるプレーの部分だけではない。【本間翼】