<オールスターゲーム:全パ3-1全セ>◇第3戦◇22日◇いわき

 球宴最終戦、途中出場でも主役はやっぱりこの男だった。マツダオールスターゲーム2013は22日、福島・いわきで第3戦が行われ、日本ハム大谷翔平投手(19)が同点適時打を放ち、決勝ホームも踏んで全パの逆転勝ちに貢献した。高卒新人では86年清原以来の打点を挙げ、敢闘選手賞(賞金100万円)を受賞。さらに3戦通じての“MVP選手”に贈られる「スカイアクティブテクノロジー賞」も受賞し、マツダ車1台をゲットした。両軍本塁打ゼロに終わった球宴は60年ぶりとなったが、ファンは二刀流ルーキーの一挙手一投足に酔いしれた。

 試合序盤はテレビ出演し、三塁コーチを務めていた大谷が、最後は表彰台に上がっていた。途中出場し、敢闘賞とスカイアクティブテクノロジー賞をダブル受賞。賞金100万円と新車をゲットした。「まさか取れると思っていませんでした。いいところで起用していただいて感謝したいです」。60年ぶりにノーアーチに終わった球宴で、特大の1発以上の衝撃を、球史とファンの心に刻んだ。

 出番は7回の右翼守備からだった。続く8回。1点を追う1死三塁の好機で打順が回った。2ボール2ストライク。5球続いたヤクルト山本哲の直球が、内角の一番厳しいところにきた。「変化球も頭をよぎりました」。迷いはあった。だが、長い腕をたたみ、ボールの軌道にバットを合わせた。最後は右手1本で、二遊間へ。「前進守備じゃなかったらセカンドゴロです。でもインコースのストレートをさばけてよかった」。球宴で高卒新人が打点を挙げるのは86年の清原以来2人目。ソフトバンク内川の二塁打で勝ち越しのホームも踏み、全パの鮮やかな逆転劇へつなげた。

 「二刀流」に挑戦している大谷の辞書に、不可能はないのかもしれない。生まれ育った東北での一戦。寄付という形で震災復興に役立てるため、個人賞の賞金を「取れるようにがんばりたい」と言った。だが、スタメンを外れることはもともと決まっており、現実的には難しかったはず。「(前を打つ)今江さんがつないでくれたので」と控えめに話すが、チャンスを生かしたのは、自身の努力と技術があったからだ。「親と相談して決めたいです」。運転免許を持たない19歳は、車と賞金の一番いい使い道を検討する。

 投打をこなした地元・札幌での第1戦、史上初の高卒ルーキー1番打者として球宴初安打を放った第2戦、そして被災地で行われたこの日の同点打。選び抜かれた一流プレーヤーたちが集う夢舞台でも、規格外ルーキーが、終始ど真ん中で輝いた。「楽しかったですし、こういうところにいられて幸せでした」。夢のひとときを名残惜しむように、たっぷりと余韻に浸った。だが大谷の活躍する姿を目撃したプロ野球ファンもまた、同じように幸せを感じたはずだ。【本間翼】