エースが己の限界を突破する。ソフトバンク摂津正投手(31)が21日、長崎市内で自主トレを公開した。「今のスタイルで限界が見えた」と、3年連続2桁勝利にも満足せず、新球としてカットボールとシュートの習得を目指していることを明かした。楽天田中の投球からもヒントを得ながら、限界のその先に突き進む。

 摂津はまだまだ満足していなかった。11年の先発転向後、3年連続2桁勝利。2年前に17勝で最多勝と沢村賞も手にした。中継ぎ時代も含めた濃密なプロ5年間を過ごし、年俸は球界最速で4億円にも到達。それでも右腕は進化を追い求めていた。

 「ある程度、今のスタイルで限界が見えた。これよりあと3勝、4勝と積み上げたい。その中で考えた結果、変化を与えようと思った」

 昨年も15勝を挙げたが、終盤4戦は0勝3敗。研究する相手を上回ろうと出した答えの1つが、新球マスターだった。昨年までは直球、カーブ、シンカー、スライダー。これにカットボールとシュートを加えようと、昨秋から試みている。「遊びの中で投げてます。キャンプで使えるか試していきたい」。練習中にも、カットボールをこっそり投げた。

 摂津にはこだわりがある。「もともと小さい変化球が投げられない。使うのが嫌だった。でも両方使えれば一番いい。あえて挑戦してみようかなと」。従来の変化球は、どちらかと言えば曲がりの大きな球筋。対して2種類の新球は、速く鋭い曲がりで打者のバットの芯を外す狙いだ。

 「左バッターに対して食い込む球がない。カットを投げられれば投球の幅が広がるし、シンカーも生きる」とカットボールの効果を説明。握りは直球に近いという。自主トレをともにしているオリックス甲藤が得意にしていることから、聞いて参考にしている。

 またシュートは、楽天田中の投球スタイルからヒントを得ていた。

 「シンカーを投げて打者がバットを振らなかった時に、真っすぐに近いシュートを投げて手を出させることもできる。去年、マー君がそれをやっていた。そうすれば球数も減らせる」

 昨年の奪三振率は8・09。田中やオリックス金子を上回りリーグ1位だった。さらに打たせてアウトに取れれば、目標のシーズン200投球回に近づける。

 「去年は4位というふがいない成績だった。リーグ優勝、そして日本一を目指してやっていきたい。個人的には去年の数字を上回って、今までで最高の成績を残せるようにしたい」。ゴールは定めず、挑戦を続ける。摂津に限界の2文字はない。【大池和幸】