<日本ハム0-5DeNA>◇23日◇札幌ドーム

 最後の打者を三ゴロに打ち取っても、いつものほえながらのガッツポーズはなかった。DeNA井納翔一投手(28)が堂々の投球で、巨人菅野に並ぶハーラートップタイの7勝目。前回16日の阪神戦で8回に1点を失い完封を逃したが、今回は9回2死二塁のピンチをしのぎ、同じ失敗を繰り返さなかった。「疲れました。前回は前回。何も考えずに投げました」と、131球の余韻に浸った。

 ピンチを招いても、昨季のように四球で崩れることはなかった。昨季18試合に登板し、1試合の与四球平均は3・53個。「去年は、絶対に打たれたくないと思って、全力で投げていた」。その結果が四球につながった。だが、今季は「打たれてもOK」という楽な気持ちでマウンドに上がっている。「勝負はベース上で」と、四隅を突くよりややアバウトな制球でも思い切って腕を振ることで大胆な勝負ができるようになった。「気持ちを変えただけでこんなに変わった」と、この日はわずか1四球。散発4安打、10奪三振と危なげなかった。

 新球も効いた。「外国人や強打者にはインコースに厳しくいかないと抑えられない」と、オフ中にツーシームを覚えた。未完成で、1試合に1球しか使わなかったが、この試合では10球を投じた。2回、先頭の4番中田からツーシームで三振を奪った。捕手の高城は「良いところに決まった」と褒めたが、井納は「今日は(ツーシームを)投げてない」と、投げたことすら覚えていなかった。

 最下位と低迷しているチームで、活躍ぶりは際立っている。今やエースと認める中畑監督は「目標を持ったボールに感じる。本当に素晴らしい」と、2年目右腕の成長を喜んだ。勝ち星は再び菅野に並んだが、「気にしていない。僕は僕」と頼もしかった。【細江純平】

 ▼井納が10奪三振でプロ初完封。DeNAで交流戦の完封勝利は13年6月12日ロッテ戦の三浦以来5人6度目だが、2ケタ奪三振で達成はチーム初。これで井納は7勝目。DeNAで5月までに7勝は、すべて救援だった92年佐々木以来22年ぶり10人目。すべて先発では84年金沢以来30年ぶりとなる。