<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク1-0阪神>◇第5戦◇30日◇ヤフオクドーム

 異様な光景だった。試合終了直後、グラウンドに飛び出したのは、日本一を決めたソフトバンクの選手たちだけではない。阪神ベンチから和田豊監督(52)、コーチ陣が鬼の形相で審判団に駆け寄った。西岡の守備妨害の判定を不服として、激しく詰め寄った。ソフトバンク秋山監督の胴上げも、抗議の間はお預けとなった。

 1点を追う9回、阪神にタナボタの絶好機が舞い込んだ。3四球で1死満塁。打順は、今シリーズ不調も、この日2安打を放っている西岡に回ってきた。カウント3-1から甘い直球をフルスイングではじき返したが、打球は無情にも一塁・明石の正面へ。「一→捕→一」の併殺におあつらえ向きなゴロだった。捕手の細川が本塁で送球を受け2アウトとなり、あとは一塁へ送球するだけとなった。

 ここから事態は急展開を見せた。細川の一塁送球が、西岡の体に当たり、ボールが外野へ転がる間に、二塁走者田上がホームインした。阪神が土壇場で同点に追いついたと思った場内は、悲鳴と歓声が入り交じる熱気に包まれた。しかし、一連のプレーを冷静に見ていた白井球審は、西岡の走塁を守備妨害と判定。併殺完成でゲームセットを宣告した。

 もちろん、判定は覆らなかった。毅然(きぜん)とした態度で抗議に対応した白井球審は、和田監督が引き下がった後に報道陣に詳細を説明した。西岡は両足とも走路を外れ、ラインの内側を走っていたとし「明らかに守備を妨害してやろうというものを感じた。(西岡の体にボールが)当たった、当たらないは関係ない。片足でも(走路を外れたら)ダメです」と話した。

 プロ野球誕生から80周年のメモリアルイヤー。長い歴史で、おそらくこんな日本シリーズの幕切れは初めてだろう。最後の最後に誰も予想できないドラマが待っていた。

 ◆公認野球規則6・05(抜粋)

 打者は、次の場合、アウトとなる。(k)一塁に対する守備が行われているとき、本塁一塁間の後半を走るに際して、打者がスリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走って、一塁への送球を捕らえようとする野手の動作を妨げたと審判員が認めた場合。この際は、ボールデッドとなる。