阪神福留孝介外野手(37)が6年ぶりの代表復帰を強烈にアピールした。6日、宜野座キャンプ視察に訪れた侍ジャパン小久保裕紀監督(43)に代表招集を志願すると、初めて行った特打では226スイングで驚異の67柵越え。首位打者返り咲きを宣言した37歳の本気度を見せつけた。かつてのMVP打者が完全復活への道を歩み始めた。

 日の暮れかけた宜野座球場に快音が響き渡った。福留がバットを振るたび、外野スタンドに待機しているアルバイトが右へ、左へ。低い弾道で飛び出した打球はグングン伸びてフェンスを越える。左翼方向へライナーを放ったかと思えば右中間スタンドへ特大の1発を連続でたたき込んだ。

 約1時間の特打。226スイング中67発が柵越えだった。約7割が安打性の当たりという確実性もさることながら、約3本に1本がスタンドという圧倒的なアーチショー。ゴメスとマートンのいない宜野座が久しぶりに華やいだ。

 「悪くはないと思う。いい感じまではいかないけどバットは振れていた」

 自信に満ちた福留は特打の前に、こんな行動もあった。侍ジャパンの小久保監督が視察に訪れると、あいさつに歩み寄った。そこで「呼んでもらえるように頑張ります」と笑顔で代表復帰を“志願”したという。特打の時間、小久保監督は既に球場を後にしていたが、09年のWBC以来6年ぶりの復帰志願は本気だった。

 「せっかく(現役で)やっているんだから、それくらいの意気込みを示さないと、という話をトリ(鳥谷)と剛(西岡)としていた。これが冗談にならないように、しっかりと頑張りたいです」

 すでに首位打者を狙うと宣言しているが、それに加えて代表復帰予告-。今季への自信がうかがえる。小久保監督も「福留の状態の良さはわかった。(11月開催の)プレミア12は日本のトップ選手が集結しないと勝てない大会。もちろん(年齢に関係なく)チャンスはある」と言い残した。

 昨季は開幕直後に西岡との激突で故障したが、夏場以降に本来の打撃を取り戻し、CS制覇の原動力となった。スタンスを狭くし、オープンに構えるスタイルは昨季終盤からの継続だ。

 和田監督の声も弾む。「(阪神でのキャンプは)3回目か。その中では一番いいし、昨年の後半、自分の打撃を取り戻して、それがそのまま出ている。(バットが体に)巻き付くようになった」。この日、右翼ポール際に飛んだ打球はほとんど切れずに、スタンドイン。ここ数年、見られなかった弾道だ。かつてのMVP打者に復活の気配が漂ってきた。【鈴木忠平】

 ◆プレミア12

 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催する、世界トップクラスの国による野球の国際大会。今年11月8~21日、日本と台湾で共催。開幕戦、準決勝、決勝は日本で行う。参加国はWBSC世界野球ランキングトップ12のチームで米国、キューバ、台湾、オランダ、ドミニカ共和国、韓国などが出場予定。<福留の日本代表歴>

 ◆AAAアジア野球選手権(94~95年)

 PL学園2年在学時、オーストラリアでの第1回大会に出場。4番を務め優勝。

 ◆アトランタ五輪(96年)

 日本生命時代の19歳で代表に。松中信彦、井口資仁、今岡誠らと銀メダル獲得に貢献。

 ◆アテネ五輪(04年)

 初めてプロだけで構成したチームで全9試合に出場し打率3割1分6厘。銅メダル。

 ◆第1回WBC(06年)

 準決勝韓国戦では0-0の7回代打に立ち、先制2ラン。決勝キューバ戦でも9回にダメ押し2点適時打。初代王者の立役者に。

 ◆第2回WBC(09年)

 20打数4安打に終わったが、若手に積極的にアドバイスを送り連覇を側面から支えた。