気持ちは、はやカープの一員-。広島は10月31日、前日のドラフトで1位指名した岩本貴裕外野手(22=亜大)、2位指名の中田廉投手(18=広陵高)に指名あいさつを行った。岩本はこの日、神宮球場での東洋大戦に敗れ優勝を逃したが「悔いはない。これからしっかり体を作りたい」とプロでの雪辱を誓った。

 勝った方が優勝という大一番。亜大は4季ぶり、東洋大は戦後初の4連覇がかかる試合。「4番・中堅」で先発した岩本は無念の4打数無安打。ロッテから3位指名を受けた東洋大・上野に完封勝利を許した。

 それでも試合後の岩本の表情は明るかった。「優勝で終わりたかった。でも全員で戦った。悔いはないです。悲しいとか悔しいではなく、4年間しっかりやれたという思い」。充実感をにじませながら長くて短かった4年間を振り返った。

 リーグ優勝も神宮大会優勝も経験。日米大学選手権制覇や世界大学選手権銅メダル経歴は輝かしい。1部リーグで積み重ねた本塁打は16本。この日、3度目のベストナインに選ばれた。

 思い出のいっぱい詰まった大学野球に別れを告げ、「プロ」の世界に足を踏み入れる。「自分はホームランバッターではない。野手の間を抜ける打球を心がけたい」。ファオ・ザ・チームに徹する左の大砲。この日、指名あいさつで神宮球場を訪れた苑田スカウト部長も「本人は前田智に憧れているが、私は山本浩二タイプだと思う。左右の違いはあるが、打球の質が似ている」と改めて絶賛した。

 「広島に戻れるのは、よかったと思う」と故郷への思いを口にした後、「しっかり走って、ウエートして体作りからです」。最後を優勝で飾れなかった無念さ-。それを晴すのは次の舞台だ。【網

 孝広】