プロへの第1歩はとんだドタバタ劇で幕を開けた。広島のドラフト3位、明大・上本崇司内野手(22=広陵)が8日、都内のホテルで仮契約を行い、契約金7500万円、年俸1000万円(金額は推定)で合意した。印鑑を忘れ、往復1時間かけて取りに戻るハプニングが起こったが、何とか無事にサイン。背番号は「0」に決まった。

 危うく、契約しそこねるところだった。午後4時。ホテルの一室で入団意思を確認した上本は、契約書を前にして固まった。「印鑑は?

 って聞かれて、ないことに気付きました…」。入室から10分もたたないうちに、慌てて退室。タクシーに飛び乗り、武蔵野市から調布市内の自宅へ取りに戻った。加えて、運転手が道に迷う誤算つき…。再び交渉の席に着いた時には、午後5時を回っていた。

 まさかの忘れ物に「家で準備してる時から緊張してしまって。試合でも1打席目は足が震えてるくらい、緊張するタイプなんです」と恐縮。だがそんなドタバタも、選手としての実力には関係ない。1時間、ホテルで待ちぼうけとなった苑田スカウト部長は「今のカープにいない、チームリーダーになれる選手だと思いますよ。二遊間のスローイングはトップクラス」と絶賛。笑い飛ばし、不問に付した。

 背番号は「0」が与えられた。「1ケタでびっくりです。(故)木村拓也さんのイメージ。自分もしつこいプレーで、相手に嫌がられる選手になりたい」。東京6大学リーグでは昨秋、二塁手として大学日本一に貢献。華麗な守備はもちろんだが、50メートル走5秒9の俊足、打撃の粘り強さもウリで、通算20盗塁、33犠打、56四死球はいずれも現役1位だ。苑田スカウト部長も「ゼロはうちのルーキーでは初でしょう」と期待の大きさをうかがわせた。

 地元広島・福山市出身。広陵の同期生、中田廉の試合をマツダスタジアムで観戦したこともある、生粋の広島っ子だ。兄博紀は阪神、中学時代バッテリーを組んだ大田泰示は巨人に進み、常にプロの世界から刺激を受けてきた。「小さい頃から見てたので、カープが一番好きです。仮契約して、ようやく実感が湧いてきました。開幕1軍も、できたら、目指したいです」。無事に判を押して、上本も憧れの舞台へ踏み出す。【鎌田良美】