侍ジャパンの大谷翔平投手(28)が衝撃的な2発で万全の状態を証明した。6日、「カーネクストWBC強化試合」の阪神戦(京セラドーム大阪)に「3番DH」で合流後初出場。

3回の第2打席、体勢を崩されながら右手1本、片膝をつきながらの、ありえない1発をバックスクリーン右へ。続く第3打席では、阪神のドラ6左腕富田の高め直球に詰まりながら、中越えに3ランを放った。大会側の主催で出場可能となった強化試合の初戦。3打数2安打6打点の大暴れで期待に応え、沈滞気味だった侍ジャパン打線を鼓舞した。

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大谷が、まさに侍になった。3回2死一、二塁、追い込まれてから外角低めに沈んだ136キロのフォークに反応した。体勢を崩されながら、目いっぱい腕を伸ばした。捉えた打球は大歓声とともにバックスクリーン右へ。「才木投手も素晴らしいボールを投げていたので、なんとか負けないように。2ストライクからでしたけど、いい角度で振ることができた」。期待に応える1発を放ち、一塁ベースを回って左手を掲げた。

豪快すぎる3ランに場内はしばらく、どよめきが止まらなかった。チームメートも頭をかかえるほどの衝撃弾。それもそのはず。フォロースルーは、とんでもない形となった。打球を捉えて右手1本になり、左膝まで地面についた。あれだけ体勢を崩されれば普通なら入らない。だが、この男に常識は通じない。武士が刀を抜いたような“サムライ・ホームラン”を、日本凱旋(がいせん)試合で披露した。

珍しい姿は、打撃だけではなかった。本塁打後、三塁を回って「ペッパーミル・パフォーマンス」をまねた。先制打を放ったヌートバーが行う、コショウをひくようなポーズ。満面の笑みで決めてみせ、「ヌートバー選手の先制点が一番大きかったと思う。いい感じでみんな力が抜けて、いい試合が出来た」と、すがすがしい表情で振り返った。

勢いづいた侍の主砲は、1度の衝撃で終わらなかった。5回2死一、二塁、打席に入ると場内がどっと沸いた。本塁打を期待される中、左腕富田の高め直球をガツン。鈍い打球音でバットも折られた。だが、「シンプルに甘い球を振ろうと思って、結果的にいい打席だった。詰まりましたけど力でなんとか運べて良かった」と2本目の3ランをたたきこみ、メジャーでも屈指のパワーを見せつけた。

日本のファンの前でプレーするのは17年の10月4日以来。試合前のフリー打撃、ウオーミングアップ、そして各打席で大歓声が上がった。ヒーローインタビューのお立ち台では「まだまだ声援が足りないので、もっともっと大きい声援をよろしくお願いします」とニヤリ、笑った。初出場の強化試合で3打数2安打6打点の大爆発。しかも、膝つき“サムライ・ホームラン”と、刀を折られながらの怪力弾で2打席連発。こんなの、ありえない-。それを可能にしてしまうのが、大谷翔平だ。【斎藤庸裕】

○…山川はいずれもフォークで2打席連続空振り三振に終わった。「へんなプライドもないですし、この状態を受け止め、試行錯誤してどうにかしたい」。ベンチでは大谷の横で相手投手の情報などを伝えたが、2本の特大弾に「まじで野球辞めたいです。同じ競技をやっているとは思えない。2本目はバット折れていたし、1本目はふざけているでしょう、あんなの」と衝撃を表現した。

○…松井が“オオタニ効果”で復調を示した。7回に3番手で登板。最速150キロをマークするなど3者凡退に抑えた。3日の壮行試合中日戦は1回もたず4失点。直後に大谷から「もうちょっと前傾を意識した方がいいと。右足がつく前に左腕も上げて準備する」など助言を受けていた。吉井投手コーチも「大谷にアドバイスをもらったようで。(助言内容は)知らないですけど、良かったです」と笑顔だった。

○…湯浅が7点リードの8回に4番手で登板し、3者凡退に仕留めた。熊谷を空振り三振に仕留めるなど、わずか6球で料理。自チームの阪神打線への投球に「朝から変な緊張感があった」と苦笑いしたが「相手関係なくやることやるだけ。感覚よく投げられた」とうなずいた。本戦前ラスト登板となる見込みで、WBC使用球への適応も完了。満を持して世界一奪回への戦いに向かう。

○…中野が途中出場で阪神ナインと対戦した。6回先頭で安打出塁した源田の代走で出場すると、京セラドーム大阪は大きな拍手。8回の打席は西純のクイック投法での外角低め149キロ直球に手が出ず、見逃し三振で苦笑いを浮かべた。守備では昨季まで守った遊撃に就き、3度の守備機会を無難にこなした。試合開始直前の円陣では声出し係に指名された。「たくさんの人が見に来ています。全員でしっかりと日本の野球をして、阪神をボコボコにしてやりましょう」。ナインから拍手が沸き上がるなど、士気を高めていた。

○…追加招集された牧原は、2打席連続三振のホロ苦デビューだった。6回に代打で登場するとフォークを空振り三振。9回の2打席目は146キロの直球に手が出なかった。「緊張で膝が震えた。1軍で初めて打席に立った時以上。人生で一番緊張して空回りでした」。守備では無難に飛球を処理したが、打撃でもアピールしていく。

▽日本吉村打撃コーチ(打線について)「全員そろって、ミスターたっちゃんも頑張ってくれて、日本のチームになじんでくれてる。日本のファンの人もすごく好感を持ってくれるかなというプレースタイル。大谷君も吉田君も来て、本当に本番に向けて雰囲気がガラッと変わった」

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