進化を示す1発だった。第1打席、大谷は2ストライクから高めの154キロ直球に空振り三振を喫した。

間合いにややズレがあったのか、「ちょっと反応が悪いかなと思った」と振り返った。相手投手からすれば、高めの速球に対する“意識付け”に成功した1球だ。当然、大谷にとっては、次の打席で頭に入れるべきボールだったはずだ。

投手としては高めの直球を布石に、低めの変化球で攻めることも可能。大谷の第2打席、才木は速球で追い込みながら、フォークを決め球に選択した。一方、打者としては、速球に遅れ気味だった第1打席での失敗を踏まえて、早めのタイミングで対応する必要がある。だからこそ、大谷は左膝をつくまで体勢を崩された。それでも、打球は中堅フェンスを越えていった。

メジャーでいえば、95マイル(約153キロ)以上の直球で押す投手はパワーピッチャーの部類に入る。20年は高めの速球に空振りし、これを意識させられると低めの変化球にも対応できなかった。ただ、21年から高めの速球に対する弱点を克服。高低のパターン化された攻めは減った。だが、パワーピッチャーから直球主体に攻められた上で低めに沈む変化球を決められると、さすがの大谷でもそう簡単には打てない。

メジャー通算127発で、9割以上は現地で目撃した。体勢を崩されての1発や片手1本でスタンドまで運んだシーンは何度も見たが、片手1本かつ片膝をついた本塁打なんて、見たことがない。高めに対応する準備をしながら、完全にタイミングを崩されても、捉えれば柵越えできる。衝撃の凱旋(がいせん)初アーチは、磨き続ける技術とパワーの結集だった。【MLB担当=斎藤庸裕】

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