日本の「51番」を背負う意味を広島鈴木誠也外野手(22)が初日から体現した。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた合宿が23日、宮崎でスタート。2大会ぶりに使用された背番号51が攻守で輝きを放った。テレビで見ていたイチローの背中。強く、支え合う日本へ。若武者が新しい51番の歴史をつくろうとしている。

 日本のライトに背番号51がついた。シートノックで鈴木がただ1人、右翼に入った。ゴロ捕球から三塁にノーバウンド送球。ゴールデングラブ賞を獲得した守備でスタンドを沸かせた。フリー打撃ではゆったりとしたフォームで3発を左翼と左中間に放り込んだ。「体の状態も悪くない。自分のペースで出来ました」。22歳の「51番」は初日から全開だった。

 自覚と責任、重圧を背中につける。その番号の意味を、分かっている。鈴木の耳には、あの日のヤジがはっきりと残っている。昨年11月の強化試合でスタンドから声を荒らげられた。

 「なんでお前が51番をつけてるんだ! 意味が分かってるのか!」

 悔しさがこみ上げるとともに、ファンにとっても重要な番号であることを再認識させられた。「日本の51番はイチローさん。誰がどう考えてもそう。その番号をつけられることは野球人として光栄だし、汚してはいけない」。何も考えずにつけていたわけではないが、勝利を義務づけられた番号の重みを実感した。

 テレビの中の51番は格好良かった。多くの選手がそうであるように、鈴木もまた、イチローに憧れた1人だ。第2回大会の韓国との決勝戦でイチローが放った決勝の2点適時打は「くらいつくように見ていました」。広島で自身が「赤イチロー」と呼ばれれば「イチローさんに失礼です」と本気で言った。愚直に、野球に正直に生きてきた。

 負けん気の強さ、世界一への欲望は第1回大会で「向こう30年、日本には勝てないな、と思わせるような勝ち方をしたい」と言い放った“先代”譲り。鈴木も「野球では絶対に負けたくない。なめられたくない」と鋭い目で言う。さらに「自分が打って勝てば最高ですけど、WBCは違う。とにかく日本が勝てればいい。何でもやります」と続ける。何よりあふれるエネルギーが日本の力になる。「今日は楽しかったです。とにかく実戦で結果を出したい」。新たな歴史の始まりか。日本のライトには51番がよく似合う。【池本泰尚】