プロレスリング・ノアのGHCヘビー級王者清宮海斗(26)が、2年越しに己に打ち勝った。1月21日、新日本プロレス横浜アリーナ大会で、新日本のIWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカ(35)とタッグマッチで対戦した。2年連続となる両団体の対抗戦。昨年と同じタッグマッチで、相手も同じオカダ。だが、1年前に敗れて号泣し、もろさを露呈した清宮は、もうそこにはいなかった。

試合開始前から目の色が違った。先発を買って出ると、オカダとの対戦を熱望。相手は「眼中にない」とでも言わんばかりに目を合わせようともせず、試合中には自身に背中を見せる無関心な態度を取った。それでも清宮は、死角からの顔面蹴りで、有無を言わさずに振り向かせた。

額から流血を見せ、激怒したオカダと、場外乱闘。会場全体が自身へのブーイングで包まれる中、最後まで引かずにつかみかかり、マイクでは「シングルで決着付けろ! びびってんのか? だったら帰れよ」と言い切った。昨年はオカダに「調子乗ってんじゃねえぞ!」と厳しい言葉を投げかけられても、泣いて退場するだけしかできなかっただけに、大いに成長を実感させた一幕だった。

昨年9月にN1を制覇し、2度目のGHCヘビー級王座を獲得。師匠の武藤から伝授された秘技を駆使し、ここまで3度の防衛を成功させた。常に口にするのは「新時代」を背負う自覚と自負。元日の日本武道館大会では、因縁の挑戦者拳王を下し「俺を見にノアに来い」と叫んだ。

リングを降りると、心優しき好青年。その真面目さがたたり、1度目にベルトを失った際には自分自身を見失うことがあった。だが、今は違う。謙虚さは変わらずも、王者の自覚が芯を太くさせた。ファンからの信頼も厚い、ノアの顔だ。

新日本との対抗戦は無効試合に終わったが、見据えるのはプロレス界の頂点だ。武藤の引退試合となる2月21日の東京ドーム大会のセミファイナルで、オカダとの王者同士のシングル対決が決定した。オカダは対戦拒否の姿勢を示しているが、関係ない。今度は実力で振り向かせてみせる。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)