元大関とはいえ、さすがに現役の関取には敵わないという。

引退して15日でちょうど1年。稽古場でまわしを締めて力士を指導する秀ノ山親方(元大関琴奨菊)は、気分次第で相撲を取ることもある。「この前は(弟弟子で十両の)琴勝峰と三番(稽古)をやったけど、1発で持っていかれましたね。さすがにもう厳しいかなあ」と苦笑い。1年前の引退会見では「できるならまだ相撲を取りたいのが本音」と語っていたが、徐々に力士としての踏ん切りはついてきた。

東京開催だった昨年11月場所中に現役引退を発表した。2年ぶりの九州開催。福岡県柳川市出身で、ご当所場所では大歓声を浴びた。7月の名古屋場所後に取り外された16年初場所の優勝額は、今場所後に地元柳川市の文化体育館に寄贈する予定。「今振り返ってみても九州の方々の応援は本当に力になった。地元に何かしら還元したい」。形にして“恩返し”する。

コロナ禍で先は見通せない状況だが、断髪式は来年の開催を目指している。「自分にできるのは相撲普及しかない。このご時世で何を伝えられるかじっくり考えたい」。19年の力士生活を支えてくれたファンや関係者に思いを伝える。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)