もしも大相撲の引退力士の中からベストイレブンを組んでみたら…。ついに開幕したW杯カタール大会に合わせ、角界きってのサッカー通として知られる元横綱鶴竜の鶴竜親方にこんな話題を振ってみた。記者が考えに考え抜いた布陣(いずれも現役時のしこ名)を力説すると、同親方も興味津々。時折うなずきながら、持論を展開してくれた。

布陣は4-2-3-1。GKは武蔵丸。DFは右から寺尾、千代大海、安美錦、玉乃島。2ボランチに旭国と鶴竜。その上の3枚は左に魁聖、中央に千代の富士、右に白鵬。個性派ぞろいの集団は、はまれば面白い。ここまでは鶴竜親方も理解を示してくれた。

問題の1トップ。記者が選んだのは第68代横綱の朝青龍。驚異的な運動神経と負けん気の強さで得点を量産すると訴えたが、同親方は「ガッツがあるからDFの方がいいね」と反論。では1トップは誰に?と尋ねると、「ヘディングが強そうだから、琴欧洲で決まり」と一択。さらに妄想を膨らませると、あの人は? この人は? と名が出てくる。今度は現役力士縛りで選ぼうか。開幕したばかりのW杯に合わせ、そんな気持ちが芽生えた。【平山連】

記者が選んだ選手とその選考理由は以下の通り。システムは4-2-3-1

▽GK武蔵丸

◆記者の選考理由 正直、曙と迷った。ただ、温厚そうな顔立ちからにじむ懐の深さから、武蔵丸を選んだ。きつい時間帯にも味方を励ます声を掛けられそうだし、何より190センチを超える身長と体重200キロ超の体格は魅力。まさに壁。最後のとりでとしてうってつけだと思った。

▽DF(右から)寺尾、千代大海、安美錦、玉乃島

◆記者の選考理由 いずれも最後まで集中を切らすことなく、走り続けられそうな守備陣を基準に置いた。熱いバトルを展開する千代大海は強度の高い対人ディフェンスが売りで、CBを一緒に組む安美錦はきめ細かいラインコントロールで守備陣を統率する。これならどんなFWにも対応できそう。両サイドは、バランスを見ながら前線まで駆け上がったり、最終ラインまで戻ったりと上下移動を繰り返すことを期待した

▽MF(2ボランチ)旭国、鶴竜

◆記者の選考理由 しぶとい相撲から「ピラニア」の異名で恐れられた旭国には、縦横無尽に顔を出してボールを奪う役割を期待。一方でサッカー通の鶴竜には、高い戦術理解度と確かな足元の技術を生かして攻守で存在感を発揮してほしい。それぞれの出来が試合の結果に直結しそうだ。

▽MF(ボランチの上3枚で左から)魁聖、千代の富士、白鵬

◆記者の選考理由 角界随一のゲーム好きという魁聖はサッカー王国ブラジル出身で、ゲームの腕と同様に、多彩なテクニックで攻撃のタクトを振るうはず。幕内優勝の最多回数(45度)を誇る白鵬と「ウルフ」の愛称で親しまれた千代の富士には、土俵上で見せた勝負強さを今度はピッチの上で表現してほしい。

▽FW(1トップ)朝青龍

◆記者の選考理由 けがで夏巡業の休場届を出しながら母国モンゴルでサッカーに興じたことは話題になったが、改めて当時の映像を見てみると、その華麗な動きに驚きを隠せない。鍛え抜かれた強靱(きょうじん)な肉体から放たれる強烈なシュート。DFと駆け引きをしながら、絶妙なタイミングで裏へ抜け出す得点感覚。試合終了の笛が鳴るまでトライし続ける圧倒的なメンタル…。どんな点においてもストライカーに必要な要素を兼ね備えているはず。まさしく生粋のゴールハンター。最前線で敵の脅威になり続けるはずだ。

フットサルの試合前に握手する、元横綱朝青龍(左)とデルピエロ氏
フットサルの試合前に握手する、元横綱朝青龍(左)とデルピエロ氏