今場所から救急救命士が土俵近くに常駐している。取組で発生した力士の重大事故や負傷に対し、迅速かつ正確な対策を講じる。春場所担当の高崎親方(元前頭金開山)は「とても前向きな取り組み。専門家の方々の的確な対応に感心しています」と、真剣勝負を支える存在に感謝する。

今場所は5人の救急救命士が活動しており、初めて対応に当たったのは3日目の前相撲。再出世を目指す36歳の肥後光(木瀬)が土俵下に落ちて後頭部を強く打った際の救護活動が光った。車いすに乗る力士に付き添い、救急車が駆けつけるまでに処置に必要な情報を洗い出した。「意識レベルやケガの状態など救命士さんが聞き取ってくれて、専門家同士でスムーズなやりとりをしてくれた」(高崎親方)。4日目に平幕の剣翔が土俵上で動けなくなった際も素早く対応した。

21年春場所では、三段目力士が土俵に頭部を強打し、約1カ月後に急性呼吸不全で死去した。悲劇を二度と繰り返すまいという関係者の強い思いが、救急救命士の導入につながった。同親方は「命の危機が起きた時はスピード勝負が欠かせない。最善を尽くすために環境を整えたい」と話した。【平山連】

序ノ口最初の取組で土俵から落下した肥後光(中央)は動けなくなる(2023年11月24日撮影)
序ノ口最初の取組で土俵から落下した肥後光(中央)は動けなくなる(2023年11月24日撮影)
前相撲で負傷した肥後光は救命士に手当てを受ける(2024年3月12日撮影)
前相撲で負傷した肥後光は救命士に手当てを受ける(2024年3月12日撮影)
担架を運び込む宮城野親方(元横綱白鵬)ら(2023年11月24日撮影)
担架を運び込む宮城野親方(元横綱白鵬)ら(2023年11月24日撮影)
救護活動に加わる鶴竜親方(2023年11月24日撮影)
救護活動に加わる鶴竜親方(2023年11月24日撮影)
前相撲で負傷した肥後光は救命士に付き添われる(2024年3月12日撮影)
前相撲で負傷した肥後光は救命士に付き添われる(2024年3月12日撮影)