WBOアジアパシフィック・バンタム級6位勅使河原弘晶(27=輪島スポーツ)が、タイトル奪取で人生を変える。

 同級王者ジェトロ・パブスタン(27=フィリピン)の初防衛戦の前日計量が10日に都内であり、ともにリミットの53・5キロでパスした。波乱の人生を歩んできた勅使河原は、創設29年でジム初のベルトをささげ、元世界王者の輪島功一会長(74)に恩返しするつもりだ。

 勅使河原は物心ついた頃に父が再婚した義母から虐待を受けた。殴られ、万引を強要され、ろくな食事も与えられず、学校にも行かしてもらえなかった。4年で義母がいなくなったが生活は荒れ、窃盗、傷害、暴走行為などを繰り返し、2度少年院に入った。

 19歳の頃、自由時間に手にした本が人生を変えた。会長の自伝「炎の世界チャンピオン」。「努力と根性があれば世界王者になれる」と、その日から心を入れ替えた。模範囚となって少年院を出ると上京。迷わず輪島ジムに向かった。

 11年にプロデビューから7年目で、ようやくタイトル戦がかなった。初のサウスポー相手に世界王者になった岩佐らと100回のスパーリング。神戸まで出向いて元世界王者長谷川氏の指導も受けた。「メチャクチャ調子いい。今までで一番」と手応え十分だ。

 計量をパスすると、ベルトを肩にかけた王者と記念撮影に臨んだ。「あしたはおれのものになる。手ぶらで病院送りにします。死に物狂いで勝ち、ジム初のベルトを会長にささげる」。壮絶な人生から抜けだし、新たな人生を踏み出し、その最初の成果としてベルトをつかむつもりだ。。