ボクシングの前WBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)が4日、都内の所属ジムで会見し、現役続行を正式表明した。10月20日のロブ・ブラント(28=米国)とのV2戦で判定負けした後は進退を保留していたが、2週間前に王座返り咲きを目指して再起することを決断。今後はミドル級王座の動向を見極めつつ、1階級上のスーパーミドル級も視野に入れて王座を目指す意向も示した。

王座陥落直後は引退に傾いた村田の胸に、納得していない自分がいた。1週間後、体を動かした。最寄り駅近くのジムに通った。時間の経過とともに「人生を振り返った時、あのボクシングが集大成でいいのか。あのボクシングで終わりたくない」との思いがわき上がった。2週間前に所属ジムの本田会長に現役続行を伝え「気持ちをつくり直してもう1度、世界舞台に戻りたい」と、王座返り咲きの意欲を示した。

日本人で初めてオリンピック金メダルとプロの世界王座の両方を獲得した。次の目標設定は簡単ではない。村田は「世界王者になり、少し満足してしまった。ハングリーさが欠如していた」とも口にした。貪欲さを取り戻すための答えはある。「新しい目標が見つかれば力がわいてくる。それを見つけたい」。次戦を含め、具体的なプランは未定だが「1階級上げるのも全然あり」と新たな刺激を口にした。

ミドル級世界王者は新王者がそろう。IBF、WBOは10月に王座決定戦に臨んだばかりでV1戦は指名試合が通例。WBAスーパー、WBC王者アルバレス(メキシコ)は1階級上の王座に挑む。「(ブラントと)再戦がないなら空いている王座がない」と村田。マッチメークや階級は、すべて本田会長に一任していることを強調した上で「世界の流れを見て決めないと。普段できることをしっかりやって、流れがきたら風に乗ればいい」と待つ構えだ。「自分の中でうそは永遠につけない。自分が満足できるように」。支えてくれる周囲、ファン、そして自分のため、村田は再起の道を進む。【藤中栄二】

◆ミドル級王者の現状 サウル・アルバレス(メキシコ)がWBAスーパー、WBC王座を保持しながら、15日に米ニューヨークでWBA世界スーパーミドル級王者ロッキー・フィールディング(英国)に挑戦。WBC暫定王者チャーロ(米国)は22日に初防衛戦を控える。WBOは10月20日の王座決定戦でアンドラーデ(米国)が新王者に、IBFも10月27日の王座決定戦でジェイコブス(米国)が新王者になったばかりで、通例では初防衛戦が指名試合。WBA正規王者ブラントは先月、村田と同じく米プロモート大手トップランク社と契約。