ボクシングWBO世界スーパーウエルター級3位井上岳志(29=ワールド)の世界初挑戦が、5日に都内で発表された。来年1月26日に米ヒューストン(予定)で、同級王者ハイメ・ムンギア(22=メキシコ)に挑戦する。ムンギアは31戦全勝(26KO)と無敗の強打者で、2月に王座を獲得して今回はV3戦となる。「夢にまで見た世界戦が決まってワクワク。負けるつもりは一切ない」と決意を口にした。

井上は中3の時にケンカを売られ、ボクシングに目覚めた。休み時間に転校生からトイレに呼び出された。顔面禁止で腹を殴り合った。「アドレナリンが噴き出し、高揚感を感じた」。サッカーのDFだったが、すぐにボクシングで世界王者を夢見た。駿台学園では国体優勝1回にとどまり、法大では主将でロンドン五輪を目指すも夢破れた。卒業と同時に高校、大学と先輩の斎田会長に誘われ、プロに転向した。

昨年、日本、東洋太平洋、WBOアジア太平洋の3冠を獲得と急成長を遂げた。4月にIBF2位決定戦も制し、夏に指名挑戦者決定戦の予定だった。ところが、3度流れた。1度は10日前にキャンセルされたが「3度追い込んだ分成長できた。モチベーションは切れなかった」と前向き。WBOに方向転換して世界挑戦にこぎ着けた。

14年のプロデビューは引き分けも13勝(7KO)1分けと無敗の右ファイター。馬力を生かして押し込んで、素早く変則なパンチを打ち込んでいく。斎田会長は井上を「女郎グモ」と評する。「くっついて、まとわりついて、スタミナを削っていく。ボクも命を削ってでもベルトを取りにいく」と、男子ではジム2度目の挑戦で奪取へ意気込む。

この階級では日本から暫定を含めて、輪島功一ら4人しか王者になっていない。昨年の亀海喜寛以来の挑戦。重量級の壁は厚いが、井上は「ここにくるまでは会長や周囲のおかげ。あとは自分が結果を出して認めてもらうだけ。最後のチャンスと思って命をかけてやる」。海外奪取で夢実現へ気合を込めた。