初代タイガーマスクの佐山サトル(61)が、5日に60歳で亡くなった好敵手ダイナマイト・キッドさん(英国)を悼んだ。リアルジャパンプロレスの後楽園大会が6日開催され、追悼の10カウントをささげた。デビュー戦の相手で、名勝負を演じた終生のライバルの早すぎる死を惜しんだ。

佐山は、キッドさんの遺影を持って、リング上で黙とうした。かつて「命をかけて戦った」というライバルに、追悼の10カウントをささげた。マイクを握ると「昭和56年4月23日に劇的な出会いがありました。イギリスで戦っていたボクの鼻をへし折ってくれました。世界一のレスラーでした。タイガーマスクがあるのはダイナマイトのおかげです」と思いを語った。

キッドさんは、プロレス界に一時代を築いたタイガーマスクのデビュー戦の相手だった。佐山は直前まで「サミー・リー」の名前で、キッドさんの母国英国で戦っていた。師匠アントニオ猪木の要請で「タイガーマスク」としてリングに上がることを決意。81年4月23日の蔵前国技館で、対戦したのがキッドさんだった。テレビアニメで大人気だったタイガーマスクのデビューは日本中が注目した。しかし、マスクもマントも急ごしらえで「出て行くのが恥ずかしかった」。しかし、メキシコ、英国で修行を積んだタイガーマスクの空中殺法と、筋肉質の肉体美を誇るキッドさんの戦いに、場内は静まり返った。

「お客さんが今まで見たことのないプロレスに驚いて声が出ない感じだった。最初の試合の相手がダイナマイトでラッキーだった」と振り返る。デビュー戦が受けて、2人の戦いは新日本プロレスの看板カードとなり、空前のタイガーマスクブームを生んだ。

「1つ1つの技に命をかけていた。好青年でレスラー仲間にも人気があった。本当に寂しい」と、佐山は目を潤ませていた。【桝田朗】