メインイベントのIWGP世界ヘビー級選手権試合で、王者鷹木信悟(38)がザック・セイバーJr(34)の挑戦を退け、3度目の防衛に成功した。

9月23日のG1公式戦でギブアップ負けを喫した屈辱を、大舞台で晴らしてみせた。

悪夢が何度も脳裏によみがえった。セイバーJrに腕ひしぎ十字固めをかけられ、何度もタップしそうになった。だが「どんなぶざまな格好でもギブアップしない」と気力で難局を乗り越え、最後は渾身(こんしん)のラスト・オブ・ザ・ドラゴンをさく裂させ、3カウントを奪取。完全な形ではなかったが、王者の意地で上回った。

主役の座は譲らない。内藤、飯伏と同じ「昭和57年会」の面々が負傷欠場する中、孤軍奮闘の活躍で逆境を跳ね返してきた。8月には新型コロナウイルスに感染も、翌月の復帰直後にEVILの襲撃を退け、自身初のメットライフドームで2度目の防衛に成功。10月に閉幕したG1戦線では、わき腹を負傷しながらも、最終日まで飯伏らとともに優勝争いを演じ、「最後まで何があるかわからない」とリングに立ち続けた。

強靱(きょうじん)な体力と負けん気の強さから「元気はつらつおじさん」と称されることも。そのルーツは「弱肉強食というのがぴったりな街」と語る山梨県中巨摩郡(現中央市)で過ごした幼少期にある。けんか好きではなかったが、体の大きさから上級生に目をつけられることもあり、トレーニングに励むようになった。休み時間は腕相撲に明け暮れ、高校時代には、倒せない相手がいないほどに。野球をすれば、同部の主将よりもバッティングで飛距離を出した。

試合では大声を張り上げ、いつでも真正面から立ち向かう。「若手は技やスタミナどうこうよりも明るく陽気にいけ」。高校卒業後に通ったアニマル浜口道場の教えが、今でも胸にあるからだ。常に求めるのは熱い試合。「俺自身が試合に対して完全燃焼したい。相手を熱くしたいし、出し尽くしたいと思っている」と力を込める。「こんなもんじゃない。まだまだ上を目指す。竜のごとく駆け上がっていくぞ!」。この日も熱いマイクで締めくくった。【勝部晃多】