ボクシングWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)が恩師とのつながりを胸にビッグマッチに臨む。

【村田諒太vsゴロフキン】日本史上最大の決戦 世界ミドル級王座統一戦/ライブ速報>>

9日のさいたまスーパーアリーナで世界的スター、IBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との王座統一戦に向け、8日に都内で計量に臨んだ。両者ともにリミット72・5キロでクリア。今年2月、恩師・武元前川さんの十三回忌という節目を迎えた。「正しいことに使ってこそ、価値がある」と言われた両拳で最強を証明する時が来た。

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約20秒間のにらみあいの後、村田は前日に続き、笑顔でゴロフキンとグータッチを交わし、健闘を誓い合った。新型コロナウイルス対策のため質疑応答はなし。「あとは明日です。でも、明日のことを今悩むのはやめます。明日の感情は、明日になってみなければ分からない。キリストも“明日のことを思い煩(わずら)うなかれ”と言っていますし」と所属ジム公式サイトで心境を明かした。19年12月のスティーブン・バトラー(カナダ)との初防衛戦以来、2年4カ月ぶりのリングに向け心身を整えた。

新型コロナの変異株「オミクロン株」の水際対策のため、昨年12月29日に予定されていた試合。約4カ月スライドし、8日に村田、ゴロフキンらは抗原検査で陰性となり、ついに実現の運びとなった。

村田はこの2月、南京都高時代のボクシング部監督、恩師の武元前川さんの十三回忌を迎えた。ボクシング人生の転機となる出会いとなった師は10年に他界したが、今も村田の胸で生き続ける。プロデビュー戦の8月25日も偶然、武元さんの誕生日と重なっていた。

「(武元さんと)つながっているのは間違いないですね。01年に出会って、亡くなるまで10年。亡くなった後からの期間の方が長くなった。十三回忌となって思うのは、15~18歳で教えてもらったことの大切さは、36歳となってすごく大きく感じるということ。そういう出会いだと思っています」

武元さんには学校内で後輩に鉄拳をふるった時に、こう言われた。「お前は他人と違う能力を持っている。その拳は正しいことに使ってこそ価値がある」と。12年ロンドン五輪で金メダルを獲得し、プロ転向後も世界王者となって日本初の快挙を達成した。アジア人には手の届かない階級といわれたミドル級で、歴史を塗り替えてきた。そして、ついに同級最強といわれる相手との王座統一戦にたどり着いた。恩師が信じてくれた両拳の価値を、ゴロフキン戦で証明するつもりだ。【藤中栄二】