アントニオ猪木さんの一番弟子、藤波辰爾(69)が“燃える闘魂”と化した。アントニオ猪木メモリアル6人タッグマッチに出場。年齢を感じさせない師匠譲りのストロングスタイルで、猪木さんゆかりの選手たちと真っ向勝負を繰り広げた。試合後は猪木さんの決めぜりふ「1、2、3、ダアーッ」のマイクパフォーマンスで締めて、伝統の東京ドーム大会を盛り上げた。

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藤波は先鋒(せんぽう)でリングに飛び出した。15歳若い永田のミドルキックを耐えると、ドラゴンスクリュー一発で形勢を逆転させた。5分すぎには真壁、小島、永田に3連続ドラゴンスクリュー。今年古希(70歳)を迎えるレスラーとは思えない真っ向勝負。それが師匠直伝の“ストロングスタイル”だった。

“燃える闘魂”の伝承者は自分しかいない。69歳のレスラーの全身から、そんな覚悟が伝わってきた。「あの闘魂はまねしようと思ってもできない。でも少しでも猪木さんの言わんとするファイティングスピリットに近づいていければ」と、試合を終えた藤波は振り返った。

21年にデビュー50周年を迎えた。自身の団体「ドラディション」で、記念ツアーを企画して1年以上かけて全国を回った。その最中の昨年10月1日、16歳から背中を追いかけてきた猪木さんが79歳で他界。「何十年ぶり」という大粒の涙が止まらず、「目印がなくなった」と、戦い続ける意味すら失いかけた。

再び闘志に火がついたのが、猪木さんの長女寛子さんに送られた形見の赤いネクタイだった。「いろんな人にこのネクタイを披露してくださいと言われた。背筋がピンとする思いです」。今回の大会前の記者会見でもこのネクタイを締めて臨んだ。“闘魂伝承”の決意の表れだった。

51年前の新日本旗揚げメンバー。数々の名勝負を刻んだ古巣に凱旋(がいせん)し「久々に興奮しすぎたかな」。21年に左足蜂窩(ほうか)織炎を発症した影響もあり、体調は万全ではなかったが、弱みは見せなかった。「猪木さんはリングの上で命をかけているというか、闘う心構えを教えられた」。

試合後、マイクを握ると猪木さんの決めぜりふ「1、2、3、ダアーッ」の掛け声で締めた。「自分自身に気合を入れる意味でね。猪木さんに“バカヤロー”って言われないように」。藤波の心に中に、アントニオ猪木は今も生きている。【首藤正徳】

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